みなさん、こんにちは。 今日も今日とて、ケアマネジャーとして働き、家に帰れば認知症の母(オハナさん・89歳)の介護というダブルヘッダーをこなす、まりーです。
今日は、先日我が家で起きた「背筋が凍る事件」について書こうと思います。 正直、思い出すだけで寿命が3年くらい縮んだ気がします。
今、介護をしている皆さん。そして、これから介護が始まるかもしれない皆さん。 私のこの失敗談を、どうか「他山の石」(反面教師)にしてください。
プロであるはずの私が、なぜパニックになり、なぜ一番大切な判断を迷ってしまったのか。 そして、その結果どんな「とばっちり」を受けたのか(笑)。 恥を忍んで、ありのままの「本音」を綴ります。
■ 残業帰りの「ご褒美」が暗転した夜
その日は、仕事が少し長引いてしまい、1時間ほどの残業でした。 クタクタに疲れた体を引きずりながらも、心は少し弾んでいました。 「今日は遅くなっちゃったし、お弁当でも買って帰ろう!」 駅前でおいしそうなお弁当を買い込み、いそいそと帰宅の途につきます。
私の頭の中には、いつもの平和な光景が浮かんでいました。 リビングのドアを開けると、お気に入りのマッサージ機に座ったオハナさんが、テレビを見ながらのんびりと「おかえり~」と迎えてくれるはず。 そんな日常を疑いもしませんでした。
しかし、玄関のドアを開けた瞬間、違和感が私を襲いました。 家の中が、真っ暗なんです。 人の気配がない。テレビの音もしない。 「あれ?」と思った次の瞬間、足元に黒い影が見えました。
薄暗い玄関の上がり框(かまち)の手前に、オハナさんが座り込んでいたのです。
■ プロ失格!? 頭が真っ白になった瞬間
「えっ、どうしたの!?」 心臓が口から飛び出るかと思いました。 慌てて電気をつけると、オハナさんはおでこに漫画みたいなデッカいたんこぶを作って、へらへらと笑っていました。
「起きられなくなっちゃって…」
その笑顔を見た瞬間、私の頭から「ケアマネジャー歴20年」という肩書きは、音を立てて崩れ去りました。 そこにいたのは、ただの「テンパった娘」です。
本来なら、この状況でプロがすべき判断は明確です。
- 頭を打っている(たんこぶがある)。
- 高齢者の転倒である。
- 動かしてはいけない。
- 意識レベルを確認し、躊躇なく救急車を要請する。
仕事では、利用者さんのご家族に何百回もアドバイスしてきました。 「頭を打ったら、絶対に動かさないで救急車ですよ!」と。
でも、その時の私の脳内を支配していたのは、冷静な判断ではなく、ある「ポスター」の言葉でした。
■ 私を縛り付けた「呪いのポスター」
『救急車の適正利用を! 安易に呼ばないで!』
最近、街中や病院でよく見かけるあのポスターです。 「タクシー代わりに救急車を呼ぶ人がいて困っている」というニュースも頭をよぎります。
目の前の母は、意識もしっかりしている。 「痛い」とも言わず、私と会話もできている。 「これくらいで呼んだら、怒られるんじゃないか?」 「救急隊員さんに『こんなことで呼ぶな』って思われるんじゃないか?」
真面目か! と今なら自分にツッコミを入れたくなりますが、その時は必死でした。 この「真面目さ」こそが、介護家族を追い詰める落とし穴なんです。
私はあろうことか、母を自力で起こそうとしました。 しかし、脱力した大人の体は、想像を絶する重さです。 火事場の馬鹿力なんて出ません。私はただの「か弱い娘」でした。
なりふり構わず、お隣の叔父様に助けを求めました。 「すみません、母が転んで!」 叔父様と二人掛かりで、オハナさんのズボンを掴み、「せーの、よいしょー!」と引き上げて、なんとか椅子へ座らせました。 歩けることが確認できたので、「足の骨は折れてなさそうだ」と、ここで変な安心をしてしまったのです。
■ 訪問看護師さんの助言と、消えない迷い
ここでようやく、少し冷静さを取り戻し、訪問看護のオンコールに電話をかけました。
「お母様、頭を打っているんですよね? それなら救急車を呼んだ方がいいですよ」
看護師さんの言葉は明確でした。 でも、私の頭にはまだあの**「適正利用ポスター」**が亡霊のようにチラつくのです。 「でも、歩けるし…会話もできるし…」 結局、私は「自分で連れて行けます」と答え、自家用車に母を乗せて、地域の救急当番医へ走りました。
これが、第二の間違いでした。
■ 待合室での残酷な「トリアージ」
病院に着いて受付を済ませ、ホッとしたのも束の間。 ここからが、本当の恐怖の始まりでした。
待合室で待っていると、外からサイレンの音が近づいてきます。 救急車が到着しました。 運ばれてきたのは、オハナさんと同じように転んで頭を打った高齢者の方々。 ストレッチャーに乗せられた彼らは、待つことなく、次々と診察室へ運ばれていきます。
一方、自家用車で来た私たちは「順番待ち」です。 「救急車じゃない=緊急度が低い」と判断されるのです。
1時間……1時間半……。
時計の針が進むにつれ、私の不安は恐怖へと変わっていきました。 「もし今、頭の中で出血が始まっていたら?」 「さっき無理やり動かしたせいで、出血が広がっていたら?」 オハナさんは隣でぼんやりしていますが、頭の中は見えません。 この待ち時間の間に、急変して意識を失ったらどうしよう。
痺れを切らして、通りがかった看護師さんに訴えました。 「母も転んで頭を打ってるんです。発見からもう4時間以上経ってるんです…!」
看護師さんはハッとした顔をして、すぐに診察室へ通してくれました。 そこで説明された言葉は、「トリアージ」(重症度選別)。 緊急度が高い患者さんを優先するのは当然のこと。 でも、頭を打っているのに「徒歩来院」を選んでしまった時点で、私は母を「後回し」のリスクに晒してしまっていたのです。
■ まさかの「容疑者」確保!?
ようやく診察室に入れたと思ったら、今度は空気が凍りつきました。
医師がオハナさんに優しく問いかけます。 「お母さん、どうしたんですか? 頭、痛いですか?」
認知症のオハナさん、さっきまでの元気はどこへやら、キョトンとして一言。 「わかりません。でも、痛いです」
……終わった。 「転んだ理由がわからない」+「怪我をしている」。 医師の目が光りました。
「……ちょっと、お母さんだけあっちの部屋でお話聞こうか」
出たー! マニュアル通りの「別室隔離」!! これ、虐待が疑われる時の鉄則対応です! 私、ケアマネとして「怪しい時は別室で本人から話を聞いてください」って指導する側なのに、まさか自分がやられるなんて!
看護師さんに連れられていくオハナさんを見送りながら、待合室に残された私は完全に「容疑者M」。 ショックでした。 「私、毎日こんなに頑張ってるのに……」 「いや、でもプロとして医師の対応は正しい……正しいけど……!」
心がポッキリ折れかけたままで会計を済ませました。 (幸い、CTの結果は異常なしでした。本当によかった…!)
■ 母の逆襲と、ケアマネ娘の教訓
帰りの車中。沈黙を破ったのは、助手席のオハナさんでした。
「あのお医者さん、失礼しちゃうわねぇ!」
えっ? と見ると、そこにはいつものしっかりしたオハナさんが。
「こんなによくしてくれる娘が、叩くわけないじゃんね! 本当に失礼しちゃう!」
……お母様!? さっき診察室で「わかりません」って言ったの、どこのどなたですか!? あの時そう言ってくれれば、別室送りにならずに済んだのにーー!!
でも、怒りながらも私のことを「よくしてくれる娘」と言ってくれたその一言で、今日の疲れも、容疑者扱いのショックも、全部チャラになりました。
私が今回学んだ教訓はこれです。
「迷ったら、呼んでいいんだよ119。遠慮は命取り。」
そしてもう一つ。 「堂々と搬送されれば、虐待を疑われずに済む」。 これ、テストに出ますよ。(泣)
もしこれで母に大事(おおごと)があったら、私の大好きなスワローズの試合を見る時間も、ブログを書く時間も、すべて吹き飛んでいました。 「私の推し活ライフを守るため」。 そんな不純な動機でもいいから、最悪の事態を避ける選択をすべきでした。
現場からは以上です。 どんなに経験を積んだケアマネだって、自分の親のこととなるとポンコツになるんです! 皆さんも、どうかご自身の「直感」を信じて、迷わず助けを求めてくださいね。

『へっどすらいてぃんぐは ぐらんどだけで。いえのなかでは あうとです。』


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