
「デイサービスなんか行きたくない」
親にそう言われて、理由を聞いても「嫌なものは嫌」。そこで会話が止まってしまう。そんな経験はありませんか。
ケアマネジャーとして20年、この相談は本当によく受けます。そして自分の母のときにも、同じ壁にぶつかりました。
📌 この記事でわかること
- 「行きたくない」を、何が嫌なのかに分ける7つの聞きどころ
- 出てきた答えを、ケアマネジャーにどう伝えるか
- 答えが出てこない日の向き合い方
「行きたくない」は、理由をまとめて言った言葉
親が「行きたくない」と言うとき、頭の中に理由がひとつだけあるとは限りません。
「行きたくない」は、理由をまとめて言った言葉
親が「行きたくない」と言うとき、頭の中に理由がひとつだけあるとは限りません。
お風呂も嫌。人が多いのも嫌。朝早いのも嫌。
いくつも重なっているのに、口に出すときは一言にまとまってしまう。だから「なんで嫌なの?」と聞いても、答えが出てこないことがあります。本人の中でも、まだ分かれていないからです。
私が母に聞いたのは、この一言でした。
「じゃあ、どういうところなら行ってもいいの?」
母には、この聞き方が合っていました。少し考えたあと、堰を切ったように条件が出てきたんです。
「みんなでお風呂に入るのは嫌。一人で入りたいし、それに、できることなら一番に入りたいの。たくさん人がいるのも嫌だし、寒いところもいや、ぼーっと座っているのも嫌」
ただ、「どういうところ?」と聞かれても答えにくい人もいます。
「知らない」「どこも嫌」「行かないって言ってるでしょ」。これで終わってしまうこともあります。
そんなときは、一つずつ聞いてみると、嫌なことが見えてくる場合があります。「お風呂?」「人が多いこと?」「朝早く出ること?」というふうに。以下の7つは、その「一つずつ」の中身です。

「行きたくない」を分ける7つの聞きどころ
1. お風呂
みんなと一緒に入るのが嫌?/一人で入りたい?/入る順番は気になる?
お風呂は、「行きたくない」理由として、ケアマネをしているとよく聞くことのひとつです。
ただ、本人からは言い出しにくい内容でもあります。裸を見られたくない、体の傷や手術痕を見られたくない、順番を待つのがつらい。どれも、家族にもなかなか言えません。
だから、「お風呂はどう?」とこちらから具体的に聞いてみると、話しやすくなることがあります。
2. 人の多さ・雰囲気
大勢いるのが嫌?/にぎやかな場所が苦手?/静かなほうが落ち着く?
デイサービスは、規模によって空気がまったく違います。大勢いるところはにぎやかで活気があり、少人数のところは家庭的で落ち着いています。
にぎやかさを楽しめる人もいれば、大勢の中にいるだけで疲れてしまう人もいます。大切なのは、本人がどんな雰囲気なら落ち着いて過ごせるのかを知ることです。そこが分かれば、合う場所を探すのは私たちの仕事になります。
3. そこで何をして過ごすか
レクリエーションが嫌?/ぼーっと座っているのが嫌?/自分の好きなことをしたい?
「歌を歌わされるのが嫌」「子ども扱いされているようで嫌」「塗り絵をしたくない」という声は本当に多いです。
その一方で、「何もすることがなくて退屈だった」という理由で行かなくなる方もいます。母の「ぼーっと座っているのも嫌」は、まさにこちらでした。
この二つは正反対です。どちらなのかを取り違えると、探す場所も正反対になってしまうので、ここははっきりさせておきたい項目です。
4. 人付き合い
知っている人がいるほうが安心?/むしろ会いたくない?/男性・女性が気になる?
近所の人が通っているから安心、という場合もあれば、近所の人がいるから絶対に行きたくない、という場合もあります。弱った姿を知り合いに見られたくない、という気持ちです。
家族はつい前者だと思いがちですが、ここは本人に聞かないと分かりません。同じ「知り合いがいる」でも、意味が逆になる項目です。
5. 食事
食べたいもの、苦手なものはある?/食事の形やかたさで気になることは?
味が濃い・薄い、量が多すぎる、刻んであるのが嫌だ。
食事は行くたびに必ずあることなので、ここが合わないと、通うこと自体がだんだん苦痛になっていきます。持病があって食事に制限がある場合も、ここで確認しておきます。
6. 送迎
朝が早いのが嫌?/車に長く乗るのがつらい?
送迎は、家族から見ると「送り迎えしてもらえる、ありがたいもの」です。でも本人にとっては、デイサービスに行く一日の最初と最後にあたります。
ほかの利用者さんと同じ車に乗るので、ルートによっては乗っている時間が長くなることもあります。「朝早く迎えに来られると支度が間に合わない」「車に長く乗るのがつらい」。ここがつらいと、中身が良くても足が向かなくなります。家族が見落としやすい項目です。
7. どのくらいの時間なら行けそうか
朝から夕方までは長い?/半日ならどう?
「デイサービスそのものが嫌」だと思っていても、話を聞いていくと、実は「朝から夕方までいるのがしんどい」ということがあります。
デイサービスには、1日過ごすところのほかに、半日だけのところもあります。行く・行かないの二択にせず、どのくらいの時間なら負担にならないかまで分けて聞いてみてください。「まったく行けない」から「これなら行けるかも」に変わることがあります。

出てきた答えを、そのままケアマネジャーに伝えてください
この7つを聞いていくと、「行きたくない」がだいたい2つか3つの具体的なことに分かれます。そこまで分かれば、ケアマネジャーが事業所を探すときの大きな手がかりになります。
個浴がある、小規模で過ごせる、レクリエーションへの参加を本人に任せている、短時間で利用できる。事業所によって特徴はさまざまです。
もちろん、すべての希望を満たす場所が見つかるとは限りません。それでも、本人が何を嫌がっているのか分からないまま探すのと、譲れない条件が分かってから探すのとでは、選び方が変わります。
本人が言った言葉を、そのままケアマネジャーに伝えてください。「わがままかもしれませんが」という前置きは要りません。細かければ細かいほど、その人に合う場所を探す手がかりになります。
答えが出てこない日もあります

最後に、正直なことを書いておきます。
7つ全部を聞いても、何も出てこない日はあります。機嫌が悪い日、体調が悪い日、そもそも話したくない日。そういうときは、その日はやめていいと思います。
分けるための質問が、問い詰めになってしまったら意味がありません。
日をあらためて、ひとつだけ聞いてみる。「お風呂って、みんなと入るの嫌?」くらいの一つで十分です。そこから出てくることがあります。
「行きたくない」を説得する前に、「何が嫌なんだろう」と一つずつ分けてみる。そこから、その人に合うデイサービス探しが始まるのだと思います。
私の母の場合、いろいろ出てきた中で特に譲れなかったのは、「個浴」「一番風呂」「大勢は嫌」の3つでした。その3つを頼りに事業所を探した話は、こちらに書いています。




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