ある日、何気なく母の冷蔵庫を開けた私は、思わず固まりました。
🧊 豆腐 3丁
🧊 メンマ 7袋
🧊 完全に戦意を失った野菜たち
いやいやオハナさん(母)、どうした!?
元・料理上手のあなたが、なぜメンマを7袋も買っているの?
メンマ専門店でも開くつもり?
思わず笑ってしまいました。
でも、その笑いのあとに、ふっと胸が重くなったんです。
「あぁ、お母さんの認知症。もう見て見ぬふりはできないな」って。
ケアマネ歴20年。
仕事では何度も「認知症は早期発見が大切ですよ」とお伝えしてきました。
それなのに、自分の親のことになると気づけない。
いや、本当は気づいていたのかもしれません。
ただ、認めたくなかった。
今振り返ると、サインはずっと前から出ていました。
75歳で見えていた認知症のサイン
今思えば、これらは認知症の初期症状だったのかもしれません。
認知症というと「物忘れ」を思い浮かべる方が多いですが、実際には買い物の失敗や金銭管理の変化、料理や片付けなどの生活面に先にサインが現れることもあります。
綺麗好きだったのに、部屋がごちゃつくようになった。
得意だった料理のレパートリーが減って、同じものばかり作るようになった。
お金の使い方が、なんだかおかしくなった。
「年のせいかな」と思っていました。
でも、75歳のとき、決定的な出来事がふたつ起きます。
レジで支払いを済ませた飲み物を、袋詰めする場所でそのまま飲み始めた。
すぐそこまで車が来ているのに、横断歩道もない場所で渡ろうとした。
さすがに「これはまずい」と思い、神経内科を受診しました。
「予備軍」と言われた日と、薬をやめた事件
検査結果は悪くなかった。でも医師からは「予備軍」と言われました。
処方されたのはアリセプト。認知症の進行を緩やかにするお薬です。
飲み続けていれば、その後が少し違っていたかもしれません。
でも。
心無い親戚のおばちゃんが、本人にこう言ってしまったんです。
「あんた、これボケの薬じゃん」
オハナさんは怒って、薬をやめました。
そこから先、わが家は「見て見ぬふりの時代」に突入します。
💡 ケアマネとして、ひとつだけ言わせてください。
本人への伝え方は、家族が思っている100倍デリケートです。
「認知症の薬」とストレートに伝えることが、本人の自尊心を傷つけて、治療そのものを拒否させてしまう。うちはまさにそれでした。
主治医と相談して「脳を元気にする薬」「血流を良くする薬」といった伝え方にしてもらうご家族も多いです。嘘ではなく、本人が受け入れられる言葉を選ぶということ。
これは逃げじゃなくて、立派な介護の技術です。
お菓子をモグモグするオハナさんと、始まっていた介護
薬をやめてから数年。「これは認知症っぽい?」という予感はずっとありました。
でも、見て見ぬふりをしていた。
そしてメンマ7袋の衝撃のあと、気になって食事の時間にこっそり様子を覗いてみると——
夕飯の代わりに、お菓子をニコニコしながらモグモグ食べているオハナさんの姿。
めちゃくちゃ幸せそうなんです。
そのあまりにも「えみふる」な顔を見ていたら、笑ってしまった。
「まぁ、いっか。幸せそうだし」と。
でもその笑いと一緒に、ふっと気がついたんです。
「あぁ、私の介護、いつの間にか始まってたんだな」
介護は、ある日突然プレーボールの合図が鳴るわけじゃない。
特にわが家のように「なんとなく始まった」場合、気づいたときにはもう始まっている。それが現実でした。
「いつもと違う」と思ったら、チェックしてほしいこと
認知症は早期発見・早期対応が大切だと、ケアマネとして何度もご家族に伝えてきました。
でも自分の親のことになると、見て見ぬふりをしてしまう。これは本当によくあることで、決して恥ずかしいことじゃありません。
もし今、こんなことが気になっているなら。
✅ 同じものを何度も買ってくる
✅ 部屋が急に散らかってきた
✅ お金の使い方が変わった
✅ 料理のレパートリーが減った
✅ 危ない行動が増えた
ひとつでも当てはまるなら、早めに神経内科・脳神経外科・物忘れ外来を受診してみてください。
「どこに相談したらいいか分からない」という方は、お住まいの地域の地域包括支援センターに電話するのが一番の近道です。無料で、介護の入口を全部案内してくれます。ケアマネの私が言うんだから間違いないです。
気づいた後にやってきた「目を離せない」問題
異変に気づいた後、次にやってきたのが「ずっと見ていられない」問題でした。
私は日中、ケアマネとして働いています。仕事中でも、頭の中をよぎるのは——
「火は消したかな」
「転んでいないかな」
「またお菓子だけ食べてないかな」
毎回帰宅するわけにはいかない。でも、気になって仕事に集中できない。
何か方法はないだろうか。
仕事を辞めるわけにもいかない。でも、オハナさんをひとりにしておくのも心配。
そんなふうに悩み続けた末に、私がたどり着いたのが見守りカメラでした。
🩷 正直に言うと、迷いました。
ケアマネとして、私は知っています。
見守りカメラを設置するなら、本人にきちんと説明して同意を得るのが正しいやり方だと。
でも、娘としてのオハナさんを知っている。
「監視されてる」と思ったら絶対に怒る。
かといって、何も対策しないまま仕事に行くのは不安でしかたない。
ケアマネとしての正しさと、娘としての現実の間で、ずいぶん迷いました。
最終的に、オハナさんの安全を最優先に考えて導入を決めました。
※現在はオハナさん本人にも伝えて、了承を得ています。
離れた部屋からでも外出先からでも、スマホでリアルタイムに様子を確認できるので、「ちょっと心配」のたびに帰宅しなくて済むようになりました。夜間も画像がくっきり映るので、夜中に起き出していないかも確認できます。
正直、導入してからの安心感は大きかったです。
「もっと早くつけておけばよかった」と思っています。
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💡 ケアマネのひとこと:
見守りカメラは「監視」ではなく「安心」のための道具です。ただし、本人への説明なしに設置することへの葛藤は、多くのご家族が感じていること。正解はひとつじゃありません。まずは「自分が安心して仕事に行ける方法」を考えてみてください。
メンマの山を前に笑うところから
「受診するほどじゃないかも」と思っているうちに、できることが少しずつ減っていく。
それが、あとから振り返ったときに一番後悔につながる。
ケアマネとして20年。私はそんなご家族をたくさん見てきました。
そして今度は、自分自身がその立場になりました。
だから声を大にして言いたいんです。
きれいなスタートなんてなくて大丈夫。
認知症かもしれない。介護かもしれない。
そう思ったときに、すぐ受け入れられなくても当たり前です。
私だって、メンマ7袋を見るまで見て見ぬふりをしていたのだから。
だからまずは、「なんか変だな」に気づくこと。
そして誰かに相談すること。
介護は、ある日突然始まるものではありません。
気づいたときには、もう始まっている。
だからこそ、その小さな違和感を大切にしてほしいと思います。




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