「親をショートステイに預けるなんて、かわいそうじゃないか」
「自分が楽をするために母を施設に泊まらせるなんて、ひどい娘だろうか」
そう思って、このページにたどり着いた方へ。
ケアマネジャー歴20年の私は、認知症の母を預けて、野球観戦に行きました。
今日はその話をします。きれいごとは抜きです。
「ショートステイに罪悪感を感じる」「親を預けるのがかわいそう」「介護に疲れて休みたい」――そんな気持ちを抱えている方に向けて、私自身の体験をお話しします。
ショートステイとは?介護する人が休むための制度です
ショートステイ(短期入所生活介護)は、介護が必要な方が施設に短期間宿泊できる介護保険サービスです。
数日から利用でき、食事・入浴・排泄の介助を受けられます。
ここで大事なこと
ショートステイは「介護される人のため」だけの制度ではありません。
介護する家族が休むため(レスパイト)の制度でもあります。
あなたが休むために親を預けることは、制度が想定している正しい使い方なんです。
私が母を預けることになった理由

私は89歳の認知症の母・オハナさんと二人で暮らしています。
きっかけは、私自身の病気でした。
手術と入院が必要になり、その間、母をひとりにはできない。ショートステイを使うしかない状況でした。
(このときの闘病の話は膀胱がん体験記に書いています)
母には、正直に病気のことを話しました。
認知症だから理解できないだろう、とは思いませんでした。
すると母は、こう言ったんです。
「ちゃんとしっかり治してきて。お母さんはどこでも行くよ」
預けることに罪悪感でいっぱいだった私より、母のほうがずっと肝が据わっていました。
母親というのは、いくつになっても母親なんですね。
いきなり本番はNG。まず2回「練習」しました

とはいえ、いきなり10日間の宿泊は本人にも負担が大きい。
そこで入院前に、2回のお試し利用をしました。
このとき大切にしたのが、母の要望を聞くことです。母の条件は3つでした。
- 個室であること
- おやつに必ず干し芋を持っていくこと
- テレビがあること
施設は「個室・おやつ持ち込み可」を条件に探しました。
テレビは置いていない施設だったので、家から持ち込みました。
条件が全部そろう完璧な施設を探す必要はありません。
足りないところは、持ち込みや工夫で埋められます。
ちなみに10日間の入院のときは、干し芋を10日分、ジップロックに小分けして持たせました。
毎日のおやつの時間に、いつもの干し芋がある。
それだけで、母にとって施設は「知らない場所」ではなくなります。
最初に預けた日、私はずっとそわそわしていました
ケアマネとして何百人もの利用者さんをショートステイにつないできた私でも、自分の母となると話は別でした。
転んでいないか。ごはんは食べているか。寂しがっていないか。
送り出したあとも、家にいる私は落ち着きませんでした。
「今ごろ何をしているかな」
「夕食はちゃんと食べられただろうか」
「知らない部屋で、寂しくて泣いていないだろうか」
気がつくと、時計ばかり見ていました。
母がいないのだから自分の時間のはずなのに、頭の中は母のことでいっぱい。
せっかくの一人の夜を、何もせずに終えてしまいました。
そして何より怖かったのは、迎えに行ったときに「もう行きたくない」と言われたらどうしよう、ということでした。そうなったら、入院そのものが成り立たなくなる。
でも、母は帰ってきて、普通にごはんを食べて、普通に寝ました。
拍子抜けするくらい、いつも通りでした。
心配は、たいてい預ける側の頭の中だけで膨らんでいるものなんです。
10日間の入院。ショートステイがあったから治療に専念できた
入院は10日間。介護する人が入院したら、介護される人はどうなるのか在宅介護をしている家族なら、誰もが一度は考える不安だと思います。
私はショートステイのおかげで、母のことを施設に任せて、治療に専念できました。
「もしものときの受け皿がある」と知っていること。それ自体が、在宅介護を続ける力になります。
そして私は、母を預けて神宮球場に行きました

退院してしばらくして、私はもう一度ショートステイを利用しました。
理由は、治療でも入院でもありません。野球観戦です。
練習と入院で母が施設に慣れてくれていたので、「今度は自分の楽しみのために使ってみよう」と思えたんです。
試合の間、携帯電話は一度も鳴りませんでした。
便りがないのは良い便り。電話が鳴らないということは、母が普通に過ごせているということ。
そう思えたら、時間を気にすることなく、久しぶりに「介護する人」ではないただの自分に戻って、目の前の試合を楽しめました。
介護を始めてから、こんなふうに時間を忘れたのは、いつぶりだったでしょうか。
「またいつでも泊りに行くからいいよ」

実はこのとき、母には「私の治療のため」と、少しうそをついていました。
遊びに行くために預けるとは、さすがに言えなかったんです。
帰ってきた母は、私にこう言いました。
「たのしかった? またいつでも泊りに行くからいいよ」
さすが母親だな、お見通しだな、と思いました。
ケアマネとして伝えたいこと:ショートステイは施設入居の「予行演習」にもなる
もうひとつ、ケアマネとして担当の利用者さんやご家族にいつもお伝えしていることがあります。
在宅介護を続けていても、いつか「施設入居」を考えるときが来るかもしれません。
そのとき、一度も外泊経験のない親を、いきなり施設に入居させるのはとても大変です。
本人にとっては、ある日突然、知らない場所での生活が始まるのですから。
でも、ショートステイを経験していれば違います。
実際、私の担当利用者さんでも、ショートステイを繰り返し利用していた方は、施設入居になったときの混乱が比較的少ない傾向がありました。
ご家族のほうも、施設での親の姿をイメージできているので「かわいそう」という罪悪感の言葉が少なくなり、施設選びそのものにも慣れていきます。
もちろん個人差はありますが、「慣れている場所がある」という安心感は、本人にも家族にも大きいのだと思います。
うちの場合なら、個室と干し芋とテレビがあれば、母は大丈夫。
それが分かっているだけで、将来の選択肢の見え方がまったく変わります。
ショートステイは、今のあなたを助けるだけでなく、将来の親とあなたのための「予行演習」にもなるんです。
いきなり本番を迎えるより、ずっといい。私はそう思って、母と一緒に少しずつ練習しています。
まとめ:預けることは、介護を「続ける」ための技術です
親をショートステイに預けることは、逃げでも、親不孝でもありません。
介護は、頑張ることで解決する問題ではなく、サービスを使いながら続けていくものです。あなたが倒れてしまったら、介護そのものが続きません。
費用の目安(うちの場合)
要介護2・負担限度額認定(第3段階①)あり・個室利用・食費込みで1日あたり5,000円弱でした。
介護度や所得区分、施設によって変わります。
負担限度額認定については、担当のケアマネジャーに聞けば教えてくれます。
まずは1泊の「練習」からで大丈夫です。担当のケアマネジャーに「ショートステイを試してみたい」と伝えてみてください。
もし「泊まりで預けるのはまだハードルが高い」と感じるなら、日帰りのデイサービスから始める方法もあります。

在宅介護の先に施設入居を考え始めた方は、こちらの記事で8種類の施設を比較しています。

あなたが自分の時間を生きることは、介護をあきらめることではありません。介護を続けるために、必要な時間です。
私は今日も、母と暮らしながら、次の神宮を楽しみにしています。
そして母はきっと、その日もこう言ってくれるのでしょう。
「またいつでも泊りに行くからいいよ」



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