「人生会議」は大きな会議じゃなくていい|ケアマネの私がエンディングノートを一緒に書く理由

看取り

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「人生会議」という言葉を聞いたことはありますか?

名前だけ聞くと、家族がずらっと集まって、改まって話し合う……そんな大きな会議を想像するかもしれません。

「縁起でもない」「まだ早い」「どう切り出せばいいか分からない」。そう感じて、なかなか話せないという方も多いと思います。

でも、ケアマネジャーを20年やってきて私が思うのは、人生会議は、大きな会議じゃなくていいということです。

私は担当している方に、エンディングノートを少しずつ一緒に書いてもらっています。

この記事では、人生会議とは何かをかんたんに整理したうえで、ノートを使った私のやり方を書きます。

人生会議(ACP)とは

人生会議は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称です。2018年に厚生労働省がこの呼び名を決めました。

もしものときに、どんな医療やケアを受けたいか。何を大切にして暮らしていきたいか。それを前もって考えて、家族や信頼できる人、医療や介護の担当者と話し合っておくことです。

11月30日は「いい看取り・看取られ」の語呂合わせで、「人生会議の日」とされています。

病気やけがなどによって、自分の希望を伝えることが難しくなる場合があります。そんなとき、本人が大切にしていたことを家族や支援者が知っていれば、医療やケアについて考える手がかりになります。

だからこそ、本人が自分の言葉で話せるうちに、というわけです。

人生会議は、一度決めて終わりではありません。
人の気持ちは流動的で、何かがきっかけで変わることがあります。
だから、繰り返し話し合うことが大切です。

話すのは、医療のことだけじゃない

人生会議というと、「延命治療をするかどうか」のような重い話を思い浮かべるかもしれません。

もちろんそれも大切です。でも、それだけではありません。

たとえば、こんなことも

  • これまでどんなふうに生きてきたか
  • 今、大切にしていること
  • 最期に会いたい人
  • 好きな音楽、好きな場所
  • これから、どう暮らしていきたいか

こういうことのほうが、むしろ話しやすかったりします。そして、いざというときの判断の手がかりにもなります。

人生会議は、大きな会議じゃなくていい

私は、あえて大きな会議をしなくてもいいと思っています。

家族が全員そろって、テーブルを囲んで、「では、もしものときの話をしましょう」。そう構えると、本人も家族も身がまえてしまいます。

でも、ふだんの訪問の中で、日常の会話の中で、少しずつ気持ちを聞いていくことはできるんです。

日常の中で、意思を確認していく。私はそれも立派な人生会議だと思っています。

私がやっていること|エンディングノートを一緒に書く

エンディングノートというと、亡くなる前に書くもの、という印象があるかもしれません。

でも私は、これまでの人生を振り返って、今の自分を知ってもらい、これからの暮らしを考えるためのノートだと思っています。

書いてもらうのは、名前や生年月日、家族のことといった基本的な自分のことから、趣味のこと、好きなこと。そして、もしものときに自分の希望を伝えられなくなった場合、自分の気持ちを代わりに伝えてほしい人は誰か、どんな医療や介護を望むかなども書いてもらいます。

担当している方には、本人とご家族の了承を得たうえで、少しずつ書いてもらっています。一度に全部書く必要はありません。書けるところから、書きたいところから。

実際には、ほとんどの方が書いてくれています。中には、楽しんで書いている方もいるんです。

そして実は、私自身も書いています。

エンディングノートは、年をとってから書くもの、と思われがちです。でも、年齢は関係ありません。自分のため、そして家族のために書くものだと思っています。

ノートを書くことと、人生会議は同じではない

ただ、ひとつ大事なことがあります。ノートを書くことと、人生会議は同じではありません。

ノートは、本人の希望を整理したり、家族や専門職との話し合いを始めたりするための道具です。書いた内容を家族や支援者と共有して、必要に応じて話し合い、見直していく。その積み重ねが、人生会議につながっていきます。

一人だけ、断られたことがあります

これまでに一人だけ、「書きたくない」と断られた方がいました。

もちろん、無理にはすすめません。

人生会議は、聞き出すものではありません。書かない、話さないというのも、その人の意思です。私はそれも大切にしたいと思っています。

ノートがあると、聞きにくいことも聞きやすくなる

「親と人生会議をしてみよう」

そう思っても、いざ向き合うと、何から聞けばいいのか迷いますよね。

いきなり「もしものとき、どうしたい?」なんて聞いたら、「縁起でもない!」と言われてしまうかもしれません。

担当している方のご家族からは、こんな声を聞きます。

「こういうの、大事よね」

「なかなか家族では話し合えないし、聞けないので助かります」

家族だから何でも話せるかというと、そうでもないんですよね。

実は、私自身もそうです。

母のオハナさんもノートを書いていますが、一緒に書いてくれたのは訪問看護師さんでした。娘の私が聞くよりも、案外すんなり話せることがあるんです。

ご家族と一緒に書く方もいます。そうすると、ご家族が改めて本人の気持ちを聞ける。面と向かって聞くのは照れくさいことも、ノートを間に置くと話しやすくなって、家族で話し合うきっかけにもなります。

ノートが一冊あると、「今日はこのページをちょっと書いてみようか」と、自然に会話を始められるんです。

どんなノートを選べばいい?

エンディングノートには、いろいろな種類があります。書店でも売られていますし、市町村がつくって配っているところもあります。

選ぶときに私が大切だと思うのは、書く人が負担に感じないことです。項目が多すぎると、最初の数ページで手が止まってしまうこともあります。

特に親と一緒に書くなら、いきなり医療や最期の希望から始めるのではなく、好きな食べ物や趣味、家族の思い出など、話しやすい項目があるものを選びたいですね。

そして、もうひとつ。医療や介護についての希望も書き残せること。元気なときに話したことが、いつか家族の判断を助けてくれるかもしれません。

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最初から全部埋めなくても大丈夫。まずは一冊、手元に置いてみる。そして、親が話してくれたことを、一つずつ残していく。

私は、そんな始め方でいいと思っています。

親のためだけではなく、自分の気持ちを整理するためにも、エンディングノートを一冊持っておくのはいいと思います。

書いたノートは、ときどき見直す

書いたノートは、定期的に一緒に見直しています。

体調や生活環境が変われば、気持ちも変わることがあります。

「ここに書いたこと、今も変わっていませんか?」

気持ちが変わっていたら書き直せばいい。変わっていなければ、それを確認できたことにも意味があります。

人生会議は、一度決めて終わりではなく、繰り返し話し合うことが大切なんです。

入院するときは、ノートを持っていってほしい

書いたノートは、しまい込まないでほしいと思っています。

もしものときはもちろんですが、たとえば入院して、自分の気持ちを伝えられない状況になったとき。そんなときに、このノートを入院先に持っていくことをお勧めしています。

病院によっては、ノートを見て、意識がなくても好きな音楽をかけてくれたり、好きなテレビをつけてくれたり、会いたい人を呼んでくれたり。そんな配慮をしてくださるところもあります。

本人が言葉で伝えられなくても、ノートが代わりに伝えてくれる。

ただ、ノートには連絡先やお金のことなど、個人的なことも書かれています。丸ごと渡すのではなく、本人の気持ちを確認したうえで、好きなことや大切にしていることなど、必要なところを病院に伝える形がいいと思います。

趣味や好きなことを書いておく意味は、ここにもあるんです。

若いころの写真を、一枚貼っておく

もうひとつ、私がお勧めしているのが、ノートに写真を貼っておくことです。

若いころの写真や、残しておきたい大切な思い出の写真。

病気や障害で、昔とは変わってしまうことがあります。入院先や施設で関わる支援者は、元気だったころのその人を知りません。

でも、写真が一枚あれば、支援者は元気なころのあなたを知ることができます。

どんな顔で笑っていたのか。どんな場所で、誰と過ごしていたのか。

写真は、その人の尊厳を守るための
ひとつの手段になると、私は考えています。

家族で始めるときのポイント

ノートを買ったら、まずは自分の名前と、好きなことをひとつ書いてみてください。最初の一ページが埋まると、次のページも少し書いてみようかな、というきっかけになります。

  • 最初から全部書かず、好きなことや思い出から始める
  • 本人が嫌がったら、無理にすすめない
  • 気持ちが変わっていないか、ときどき見直す
  • 家族だけで難しければ、ケアマネや訪問看護師に相談する

「話しておいてよかった」と思えるように

人生会議をしたからといって、そのとおりに最期を迎えなければいけないわけではありません。

状態が変われば、気持ちも変わります。そのときにまた考え直せばいい。

家で看取ると決めても途中で選び直していい、という話は、こちらの記事に書きました。

そして、元気なうちに話していなくても、看取りの時期になってから見つかる「したい」もあります。

大切なのは、その人が何を大切にしているのかを、周りの人が知っていること。

エンディングノートは、最期のためだけのノートではありません。今をその人らしく暮らすためにも、役立ててほしい一冊です。

大きな会議じゃなくていい。
日常の中で、少しずつ。

いつか「話しておいてよかった」と思える日のために、今日の会話から始めてみませんか。

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【参考】
・人生会議(ACP):厚生労働省「『人生会議』してみませんか」

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