「親の介護、私ばかり」と思うあなたへ|姉に期待しなくなったケアマネの本音

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「なんで私ばかり」
親の介護をしていると、ふとこう思う瞬間がありませんか。

私は現役のケアマネジャーとして、20年近く介護の現場にいます。そして家では、90歳の母・オハナさんと暮らしながら介護をしています。

私には、車で片道2時間30分ほどのところに住む姉がいます。気軽に来られる距離ではありません。姉にも仕事や家庭があることは、わかっています。

でも、母の介護をほとんど一人で担っていると、どうしても思ってしまいます。
「どうして私ばかりなんだろう」って。

仕事では、介護のことで意見がまとまらないご家族に「ご家族で話し合って、意見をひとつにしてください」とお願いすることもあります。でも、いざ自分がその立場になると、そう簡単にはいきません。

頭ではわかっています。姉には姉の生活があることくらい。

それでも、どこかで「少しは手伝ってくれるんじゃないか」と期待していました。

そんな私も、この1年ほどで、ようやく姉に期待するのをやめました。

この記事では、なぜ介護は「私ばかり」になってしまうのか、ケアマネとして見てきたことと、娘としての本音の両方から書いてみます。

先に答え|「私ばかり」は、あなたのせいではありません

介護の不公平は、起きるものです。あなたの我慢が足りないわけでも、きょうだいへの頼み方が下手なわけでもありません。

無理に「納得」しなくても大丈夫です。大切なのは、一人で背負わない仕組みを作ることです。

なぜ介護は「私ばかり」になるのか

近くに住んでいる・同居している

一番多いのがこれです。近くにいる人が、どうしても頼られます。「近いから」「一緒に住んでるから」と、話し合う前に担い手が決まってしまいます。

「キーパーソン」になった人に、全部が集まる

介護保険のサービスを使い始めると、ケアマネはご家族の中の一人と話を進めます。これを「キーパーソン」と呼びます。

ケアマネが連絡するのは、基本的にキーパーソンです。サービスの相談も、体調の変化の報告も、書類のお願いも、全部その人に届きます。

最初に動いた人がキーパーソンになり、そのまま全部の窓口になる場合が多いです。

「私ばかり」の始まりは、ここにあることが多いと感じています。

親から「あなたに頼みたい」と言われる

親が特定の子どもを頼りにすることもあります。言われた側は断れず、言われなかったきょうだいは「頼まれていないから」と距離を置きます。

娘だから・独身だから・仕事の融通がきくから

「娘なんだから」という空気は、今もまだ残っています。仕事の時間が自由に見える人、独身の人にも、負担が集まりやすくなります。

知っておいてほしいこと|ケアマネは、きょうだいの分担を決める立場ではありません

ここは、ケアマネとして正直に書いておきます。

「ケアマネさんから、きょうだいに言ってもらえないかな」
そう思う方もいるかもしれません。

ケアマネによって関わり方には違いがありますが、私は、ご家族の間に入って話をまとめることは基本的にしていません。ご家族の意見が食い違ったときも、まずは「ご家族で話し合って、意見をひとつにしてください」とお願いしています。

冷たく聞こえるかもしれませんが、介護の分担や費用の負担を、ケアマネが決めることはできないからです。

ただし、何もしないわけではありません。親の状態をよくわかっていないご家族に、今の状態を説明することは多いです。「実際はこれくらい介護が必要な状態です」「娘さん、お嫁さん、息子さんの負担はケアマネから見ても重いと思います」と伝えることで、きょうだいの理解が変わることもあります。

それから、キーパーソンの方に負担がかかりすぎていて、このままでは危ないと判断したときは、私が代弁することもあります。

たとえば、ほかのご家族が来る日に訪問を合わせて、「〇〇をお願いすることはできますか?」と直接聞いてみる。協力者になってくれそうなご家族に、こちらから声をかけます。

これは、話し合いをまとめるためではありません。一人で抱えている人が倒れてしまわないように、という判断です。

✔ ケアマネがすること:親の今の状態を、ご家族に説明する

✔ 負担が限界に近いとき:キーパーソンの代わりに、ほかのご家族へ協力をお願いすることもある

✔ ケアマネがしないこと:きょうだいの分担を決める

もし今、限界に近いと感じているなら、その気持ちを担当のケアマネに正直に伝えてください。「もう無理かもしれない」と言ってもらえれば、ケアマネも動きやすくなります。

遠くのきょうだいには「見えていない」負担がある

介護は、おむつ交換や食事の介助だけではありません。

  • 病院の予約と付き添い
  • ケアマネや事業所との連絡
  • 書類の手続き
  • 薬の管理
  • 夜中に起きていないか、気にしながら眠ること
  • 決まった時間に、家にいなければならないこと
  • 外出時間も制約がある

数字にならない、いわば「名もなき負担」です。遠くに住むきょうだいには、これがほとんど見えません。

私が一番しんどいと感じるのは、時間がしばられることです。介護は、やっていること自体も大変です。でもそれ以上に、毎日同じ時間に同じことをしなければならない。平日も、週末も。

毎日のお世話をルーティーンのようにこなしていると、今でもふと思ってしまいます。
「姉は、この時間も自分の時間として使っているんだな」
「週末も自由でいいな」って。

法律は「誰か一人が背負え」とは言っていない

少しだけ、法律の話をさせてください。

民法877条1項では、直系血族と兄弟姉妹には、互いに扶養する義務があると定められています。

ただ、親族として親を支える義務があることと、特定の家族が付きっきりで介護をしなければならないことは、別の話です。法律は、どの子どもが、どんな形で介護をするかまでは決めていません。どう支えるかは、家族の話し合いで決めることになっています。

また、親への扶養義務があるからといって、自分の生活を犠牲にして、すべての介護を引き受けなければならないという意味ではありません。どのくらい、どんな形で支えるかは、それぞれの生活や経済の状況などによって変わります。

子どもの配偶者、いわゆる「嫁」は、原則として義理の両親を扶養する義務を負いません。家庭裁判所が特別な事情を認めた場合に限って、義務が生じることがあります。

「長男だから」「嫁だから」「近くにいるから」。どれも、法律で決まっていることではありません。

※法律の考え方は、ご家庭の事情によって変わることがあります。具体的な判断が必要なときは、弁護士などの専門家に相談してください。

出典:民法(e-Gov法令検索) 第877条(扶養義務者)・第879条(扶養の程度又は方法)

私が、姉に期待するのをやめるまで

姉は前に、こう言ってくれていました。
「用事があるときは言ってね、私が行くから。私も親孝行したいし」

うれしかったです。姉が来てくれたら、私が家を空けるときもショートステイを使わなくてすむ。オハナさんも、いつもの家で、いつもどおりに過ごせる。そう思っていました。

でも、いざお願いすると、
「仕事が休めないから」
「孫をみないといけないから」

と、次々に理由が出てきます。結局、来てくれたのは1回だけでした。

その1回も、正直、大変でした。

私が家を空けたのは2泊。その間の食事は、私が全部作り置きしていきました。姉には、それを温めて食べさせてもらうようにお願いしました。

歩くときの支え方も、出かける前に伝えていきました。でも、いざやるとなるとわからなかったようで、支えきれずにオハナさんを転ばせてしまいました。ポータブルトイレの片付けも、されていませんでした。

普段、介護をしていないから、わからないんだと思います。説明を聞いても、実際に体が動くかどうかは別の話です。

それに、姉が来るのは、自分の都合がいいときだけです。来れば「お母さん、長生きしてね」と、いい娘の顔をして帰っていきます。

その日の食事の準備も、布団を干すのも、全部私です。手伝いに来てくれるというより、お客さんが一人増えるのと同じでした。

正直に言うと、来てくれないほうが、私の負担は減ります。

何も協力してくれない姉に、もう会いたくない。そこまで思ったこともあります。

今振り返ると、実の姉に「来てほしくない」と思うなんて、あのときの私は気持ちに余裕がなかったんだと思います。

でも、それだけ一人で抱えていたということでもあります。そう思ってしまう自分を、責めなくていいと今は思っています。

ただ、姉はオハナさんにとっては子どもです。

オハナさんに何かあったとき、「会わせてあげておけばよかった」と思いたくない。後悔したくない。その気持ちで、自分の中におさめました。

この気持ちを聞いてくれたのは、親戚のお姉さんでした。いつも話を聞いてくれるお姉ちゃんには、本当に感謝しています。

姉に期待するのをやめてから、前より少し気持ちが楽になりました。

もちろん、何も感じなくなったわけではありません。今でも「どうして私ばかり」と思うことはあります。ただ、姉が変わることを期待して、何度もがっかりするのは、もうやめようと思ったんです。

普段介護をしていない家族に任せる怖さ

これは、自分の家で経験して、あらためて感じたことです。

介護に慣れていない家族が悪いわけではありません。ただ、家族だからといって、安全に介助できるとは限りません。

普段介護をしていないと、介助のコツも、親のその日の調子もわかりません。歩くときにどこを支えるのか、どのタイミングで手を出すのか。口で説明されても、実際にやってみると体がついてこないことがあります。善意で来てくれても、転倒などの事故が起きることはあります。

ふだん介護をしていない家族に任せるときは、次のことを考えてみてください。

✔ 歩く・立ち上がる・トイレなど、転びやすい場面の介助を、実際に一緒にやって確認しておく

✔ 食事や薬、排泄の片付けなど、やってほしいことを紙に書いて残す

✔ 転倒の危険が高いときは、無理に家族に頼まず、ショートステイなどを使うことも考える

「家族が来てくれるなら、サービスはいらない」とは限りません。介護に慣れた専門職に任せたほうが、親にとっても安全なことがあります。

「私ばかり」の負担を、少しでも軽くするために

介護を一人で担っていると、体だけでなく、気持ちも疲れてきます。きょうだいが少しでも協力してくれたら、と思うのは自然なことです。

でも、相手が変わるのを待っているだけでは、自分の負担は減らないこともあります。

きょうだいに頼めることはないか、考えてみる

遠くに住んでいて、直接介護をするのが難しいきょうだいもいます。そんなときは、「もっと手伝って」ではなく、書類の手続きや費用の負担など、できることを一つに絞って相談してみるのも一つの方法です。

ただ、お願いすれば必ず協力してもらえるわけではありません。私自身、それを何度も経験しました。

家族だけで抱え込まない

介護は、家族だけで何とかしなければならないものではありません。デイサービスや訪問介護、ショートステイなど、介護保険にはさまざまなサービスがあります。

私も、オハナさんの介護にサービスを使っています。それでも、家に帰ってからの介護や、日々の細かなことは残ります。サービスを使っているからといって、介護する家族の負担が全部なくなるわけではないんですよね。

だからこそ、今の生活で何が一番負担になっているのか、担当のケアマネに相談してほしいと思います。

誰かに気持ちを聞いてもらう

私の場合は、友達や、従姉妹のお姉さんが話を聞いてくれました。姉への不満も、母の介護で疲れたことも。

何かを解決してもらったわけではありません。ただ、話を聞いてくれる人がいる。それだけで、ずいぶん救われました。

介護の悩みは、家族のことだからこそ、誰にでも話せるわけではありません。

市町村によっては、介護している家族が集まる「介護者のつどい」のような場もあります。同じ気持ちを抱えている人と話せる場所です。お住まいの市町村や、地域包括支援センターに聞いてみてください。

どうしても家族で話がまとまらないとき

介護の方針や費用の負担について、家族で意見がまとまらないこともあります。親の状態や必要な介護については、ケアマネから説明してもらうこともできます。

扶養に関する問題など、家族だけで解決が難しい場合は、法律の専門家に相談したり、家庭裁判所の調停を利用したりする方法もあります。

納得できなくても、いい

私は、姉に期待するのをやめました。でも、姉が介護に協力してくれないことに、納得したわけではありません。

姉から連絡が来るときは、いつも「お母さん元気?」です。私への「ありがとう」も、気づかう一言もありません。そんなとき、今でもふと「どうして私ばかり」と思います。

ただ、以前のように、姉が何かしてくれるかもしれないと期待して、そのたびにがっかりすることは少なくなりました。

姉には姉の生活がある。そして、私にも私の生活があります。

ケアマネとして、これまでたくさんのご家族を見てきました。介護をする人も、しない人も、それぞれに事情があります。でも、介護を担っている人だけが、自分の生活を後回しにし続けていいわけではないと思います。

「自分がしてあげたいから、している」
そう思えたら楽なのかもしれません。でも、いつもそんなふうに思えるわけではありません。

母のことは大切です。それでも、介護がしんどい日もあるし、何もかも投げ出したくなる日だってあります。そんな自分の気持ちまで、否定しなくていいと思っています。

介護をする人にも、自分の人生があります。

母のことは大切。
でも、自分の時間だって大切です。

きょうだいとの関係に、無理に答えを出さなくてもいいし、納得できない気持ちが残っていてもいいと思っています。

使えるサービスや周りの人の力を借りながら、少しでも自分の時間を持てるように。

私も、まだその途中です。

まりー
まりー

ここからは、ケアマネではなく「娘」としての話です

朝、あと1時間だけ布団の中にいたい。
美容院の帰りに、一人でランチをして帰りたい。
好きな野球を、最後まで観たい。

これが今の私には難しいです。

「友達の朝市の手伝いがあるから」と言う姉に、「あ~、自由なんだな」と思ってしまう。そのくせ、会えば普通に笑って話している。そんな自分が、嫌になる日もあります。

この記事には書ききれなかった、きれいごとじゃない本音を、noteに書きました。

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