
「ロングショートで、しばらくつないでいきましょう」
担当のケアマネジャーからそう言われて、戸惑っているご家族は少なくありません。
「ロングショート? ショートステイとは違うんですか?」
実は、「ロングショート」は介護保険制度の正式な名称ではありません。
あくまで現場で使われている通称で、ショートステイを長期間にわたって連続で利用している状態を指します。
そして正直にお伝えすると、私はケアマネとして、ロングショートを「とりあえずの答え」にしてほしくないと思っています。
他に方法がないときの選択肢としては、確かに存在します。それ自体は悪いことではありません。
それでも「これで一安心ですね」と手放しで言えないのは、制度の仕組みと、現場で見てきた光景があるからです。
ロングショートとは?まずは言葉の意味から
ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)は、名前のとおり短期間だけ施設に宿泊し、在宅生活を続けていくためのサービスです。
ご家族が休むため、冠婚葬祭や入院で一時的に介護ができないときなどに利用されます。
この短期のはずのショートステイを、退所せずに何十日も、場合によっては何か月も続けて利用している状態。これが現場で「ロングショート」と呼ばれているものです。
💡 ケアマネのひとこと
正式な制度名ではないため、市区町村のパンフレットを探しても出てきません。ご家族が調べても情報が見つかりにくいのは、そのためです。
聞き慣れない言葉が出てきたら、遠慮なく担当ケアマネに聞いてください。
なぜロングショートになるのか|行き場がなくなるとき
ロングショートは、望んで選ぶものではありません。選択肢がすべて塞がったときに、消去法で残るものです。
典型的なのは、次の3つが同時に起きている状況です。
① 在宅での生活が限界を迎えている
認知症が進んで目が離せない。夜間に何度も起きる。介護しているご家族自身が体調を崩した。ヘルパーやデイサービスを目一杯入れても、もう家では支えきれない段階です。
② 特養は申し込んでも、すぐには入れない
特別養護老人ホームは申し込み順ではなく、必要性の高い方から入所が決まります。それでも地域によっては、長く待つことがあります。
③ 病気ではないので、入院はできない
「入院させてもらえませんか」と相談されることがあります。しかし病院は治療をする場所です。介護が大変だからという理由だけで入院することはできません。
在宅は限界。施設は待つ。入院はできない。
この3つが重なったとき、残るのがロングショートです。
できることなら、入所を申し込んでいる施設に併設されたショートステイを使いたいところです。
同じ建物なら顔なじみの職員が関わってくれますし、入所が決まったときの環境変化も少なくできます。認知症のある方にとって、環境が変わることはそれほど大きな負担です。
ただし満床で空いていない、そもそもショートステイを併設していない施設もあり、まったく別の事業所を利用するケースも珍しくありません。
ケアマネがロングショートに慎重になる5つの理由
① 利用日数には「認定有効期間のおおむね半数」という目安がある
ケアマネジャーが居宅サービス計画にショートステイを位置づけるときは、利用日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにすることとされています。
有効期間が12か月ならおよそ180日、24か月ならおよそ360日が目安です。
ただし、これは機械的に線を引く数字ではありません。特に必要と認められる場合は、これを上回る日数を計画に位置づけることも可能とされています。
一方で、半数を超えるときの手続きは、市区町村によって異なります。
理由書の提出を求めるところ、事前の承認申請を必要とするところなどさまざまです。お住まいの市区町村での扱いは、担当ケアマネに確認してください。
また、手続きをすれば必ず認められるわけでもありません。
「入所できる施設に空きがあるなら、そちらへの入所を検討してください」と判断されることもあります。保険者によっては、自宅から離れた地域の施設への申し込みを求められる場合もあり、ご家族にとっては面会に通いにくくなるという問題もあります。
② 連続利用には「30日」の区切りがある
これは費用に直結する、とても大切な決まりです。
ショートステイを連続して30日を超えて利用した場合、30日を超えた日については介護保険の給付対象になりません。その日の介護サービス費は、全額自己負担となります。
そのためロングショートでは、自宅へ戻る日や自費で利用する日をはさむなど、日程を調整しながら利用するケースがあります。
また、長期間にわたって同じ事業所を利用する場合には、介護報酬上も長期利用者に対する別の取り扱いがあります。こちらは施設側が受け取る報酬の話で、ご家族の自己負担がそのまま跳ね上がるという意味ではありません。
日数の数え方や自費になる日の扱いは複雑です。実際の日程と金額は、必ず事業所と担当ケアマネに確認してください。
💡 ケアマネのひとこと
「30日ごとに1日だけ帰る日があるのはなぜですか」と聞かれることがあります。
ご家族はその1日のために迎えに行き、また送り出すことになります。
ロングショートが「ずっと暮らせる方法」ではなく、やむを得ずつないでいる状態だということが、この1日にも表れていると私は思っています。
③ 負担限度額認定が「第4段階」だと、費用が高額になることがある
ショートステイの費用には、介護サービス費のほかに居住費(滞在費)と食費がかかります。
所得や資産が要件を満たす方は、負担限度額認定によってこれらが軽減されます。
一方、要件に該当しない「第4段階」では軽減がないため、居住費と食費は施設ごとに設定された金額を負担することになります。この金額には施設差があり、高めに設定している施設を利用すると負担がかなり大きくなります。
数日の利用なら大きな差にならなくても、ロングショートでは日数が積み上がります。1日あたり数千円の違いが、1か月では数万円の違いになります。
利用を始める前に、必ず1か月あたりの概算を出してもらってください。
④ 地域によっては、時期的に入りにくいことがある
意外に知られていませんが、農業の盛んな地域では、農繁期にショートステイの予約が取りにくくなることがあります。
田植えや稲刈りなどの時期に、その間だけ利用したいという申し込みが集中するためです。
地域によっては、こうした時期的な事情も考えておく必要があります。
⑤ そこは、終の棲家ではありません
ロングショートを続けているうちに、本人がその施設にすっかり慣れることがあります。
ご家族から、
「気に入っているようなので、このままお願いできませんか」
と言われることもあります。
お気持ちは痛いほどわかります。
それでも、ショートステイは「このままずっと暮らす」ことを前提としたサービスではありません。
ショートステイはあくまで、在宅生活を支えるための短期入所サービスです。ベッドの数にも限りがあります。
特定の方が長期間利用すれば、介護している家族が倒れそうで「数日だけでも預かってほしい」という方が、利用できなくなってしまいます。
ですので、ケアマネとしても「ここが気に入っているから、このまま」というご希望に沿うことは、難しいのが実情です。
そして、申し込んでいた施設への入所が決まれば、そこへ移ることになります。何か月もそこで暮らし、その場所が本人にとっての日常になっていたとしても、です。
忘れられない、100歳を超える女性のこと

ロングショートで利用していた施設の雰囲気が、その方にはよく合っていました。
職員に囲まれて、いつも笑っておられました。ご家族も「ここなら安心」とおっしゃっていました。
そこへ、申し込んでいた施設の入所順が回ってきました。
制度の上では、喜ばしいことです。長く待った特養に、ようやく入れる。ご家族も、私も、そう考えました。
けれど入所後、その方から笑顔が消えてしまいました。
気持ちがふさぎ込み、以前のように過ごすことができなくなってしまったのです。
ショートステイの利用中は居宅のケアマネジャーが担当しますが、施設へ入所すると、施設のケアマネジャーへ担当が移ります。私の手も、そこで離れました。
数か月後、ご家族から連絡をいただきました。
「前のショートステイに、戻すことはできないでしょうか」
禁止されているわけではありません。それでも実際には、とても難しいことでした。
退所すれば、次の生活場所をもう一度考えなければなりません。同じショートステイに空きがあるとも限りません。戻ることができたとしても、利用日数や費用の問題は再び出てきます。
「戻りたい」という気持ちだけでは、簡単に戻れない。
お伝えしながら、切ない気持ちになりました。
環境が変わるということは、高齢の方にとって、それほど大きなことなのだと改めて感じたケースでした。
利用する前に、確認してほしい4つのこと
他に方法がない状況は、現実にあります。
ロングショートを選ぶのであれば、始める前に次の4つを確認してください。
① 入所を申し込んでいる施設のショートステイが使えないか
同じ施設内であれば、入所時の環境変化を少なくできます。空きがなくても、今後の見込みを聞いておく価値はあります。
② 看取りまで対応できる施設かどうか
体制の整った事業所では、状態が変化したときに看取りまで対応してくれる場合があります。一方で、医療的な対応が難しく、状態によっては退所や入院が必要になる事業所もあります。施設によって大きく異なるため、必ず事前に確認してください。
③ 1か月あたりの費用の概算
介護サービス費、居住費、食費、日常生活費などを含めた総額を出してもらいます。負担限度額認定の段階と、連続利用した場合の自費部分についても確認しましょう。
④ 施設への入所申し込みを並行して続けているか
ロングショートは、あくまで一時的な生活の場です。利用が落ち着いたあとも、入所申し込みや待機状況について担当ケアマネと確認しておきましょう。
よくある質問
ショートステイは連続で何日まで利用できますか?
介護保険の給付上、連続利用には30日の区切りがあります。30日を超えて利用した日については介護保険の給付対象とならず、その日の介護サービス費は全額自己負担になります。実際の利用では、自宅へ戻る日や自費利用の日をはさむなどの調整が行われることがあります。日数の数え方や費用は複雑なので、事業所と担当ケアマネに確認してください。
ロングショートは通算で何日まで利用できますか?
一律に「○日まで」という上限があるわけではありません。ただし居宅サービス計画では、ショートステイの利用日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにすることとされています。特に必要な場合には、それを超えて計画に位置づけられることもあります。半数を超える場合の手続きや運用は市区町村によって異なるため、担当ケアマネに確認してください。
ロングショート中に施設の入所順が来たら、断れますか?
断ること自体はできます。ただし、次にいつ入所できるかはわかりません。また、ロングショートをいつまで継続できるかという問題もあります。本人の状態、ショートステイでの生活、ご家族の事情、次の入所機会などを含めて、担当ケアマネとよく相談して決めることをおすすめします。
まとめ|「とりあえず」で終わらせないために
私自身も、認知症の母・オハナさん(89歳)と暮らす家族介護者です。
ショートステイを利用するとき、制度を知っている私でさえ「大丈夫かな」「迷惑をかけていないかな」と心配になります。ケアマネであっても、家族になれば気持ちは同じです。
だからこそ、ロングショートを提案されて戸惑っているご家族の気持ちも、少しはわかるつもりです。
迷ったときは、一人で決めないでください。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなど、相談できる場所があります。
最後に、ひとつだけ。
ロングショートを使うことが、悪いわけではありません。
私が伝えたいのは、「とりあえずここで待ちましょう」で終わらせないでほしいということです。
その先に、どこで、誰と、どんなふうに暮らしていくのか。
そこまで一緒に考えることが、ケアマネジャーの仕事だと私は思っています。



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