
ショートステイは嫌がる。でも、ご家族は、泊まりで過ごしてもらえる場所がほしい。
そんなとき、選択肢のひとつになるのが、小規模多機能型居宅介護です。
ただ、このサービスを通常の形で利用するには、事業所への登録が必要です。今のデイサービスや、担当のケアマネジャーの変更を伴います。
この記事では、小規模多機能型居宅介護の仕組み、料金、ショートステイとの違い、そして契約前に知っておいてほしいことを、ケアマネの目線で書きます。
小規模多機能型居宅介護とは
「通い」を中心に、「訪問」と「泊まり」を、同じ事業所で組み合わせて使えるサービスです。
ご本人の状態や希望に合わせて、その時々で組み合わせを変えられます。同じ事業所の、顔なじみの職員さんから、通い・訪問・泊まりの支援を受けられるので、ケアの連続性が保たれるとされています。
3つのサービスのイメージ
- 通い:日中、事業所で過ごす(デイサービスにあたるもの)
- 訪問:スタッフが自宅に来る(訪問介護にあたるもの)
- 泊まり:事業所に泊まる(ショートステイにあたるもの)
利用できる人と、登録のしくみ
利用できるのは、原則として事業所がある市町村に住んでいる、要介護1から5の方です。要支援1・2の方は、介護予防小規模多機能型居宅介護を利用できます。
利用するには、事業所に登録します。登録できる人数は、1事業所あたり29人以下です。
1日に利用できる人数も、決まっています。通いは最大18人、泊まりは最大9人までです。実際の定員は、事業所によって違います。
泊まりの人数に限りがあるので、泊まりたい日に、必ず空いているとは限りません。
ショートステイとの違い
ショートステイは、泊まりのサービスです。小規模多機能型居宅介護は、通いを中心に、泊まりも訪問も、同じ事業所でまとめて使います。
ショートステイの料金は、泊まる日数に応じて決まります。小規模多機能型居宅介護は、基本の料金が月額です。
この違いが、ご本人の安心につながる場合があります。通いで顔なじみになった職員さんのところで、泊まれるからです。
なお、登録していない人が、短い期間だけ泊まれる「短期利用居宅介護」を、行っている事業所もあります。期間は7日まで、やむを得ない場合は14日までです。ただし、行っていない事業所もあります。
利用には条件があり、いつでも自由に体験できる、というものではありません。くわしくは、担当のケアマネジャーに確認してください。
料金は、要介護度ごとの月額
介護保険の基本の料金は、要介護度ごとの月額です。2024年度(令和6年度)の改定で定められた基本料金を、1割負担で計算すると、次のとおりです。
1か月の基本料金(1割負担)
- 要介護1:10,458円
- 要介護2:15,370円
- 要介護3:22,359円
- 要介護4:24,677円
- 要介護5:27,209円
この金額は、1単位を10円として計算した、同一建物に住んでいない方の基本料金です。加算や、地域による単価の違いは含みません。2割、3割負担の方は、これより高くなります。その後の改定で変わることもあるので、実際の金額は、事業所か、担当のケアマネジャーに確認してください。
基本の月額とは別に、食費、宿泊費、おむつ代などの日常生活費がかかります。金額は、事業所ごとに設定されています。泊まりを利用する日数によって、月々の負担も変わります。契約前に、料金表を確認しておきましょう。
月額料金と、利用限度額は別のものです
介護保険には、1か月に使える金額の上限があります。区分支給限度基準額といい、要介護度ごとに決まっています。
小規模多機能型居宅介護の基本の料金は、この上限よりも低く設定されています。
そのため、必要に応じて、小規模多機能型居宅介護にはない、訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与などを、組み合わせて使えます。
居宅療養管理指導も、併用できます。こちらは、この上限の対象には含まれません。
ただし、加算や、ほかに使うサービスによっては、区分支給限度基準額を超える場合があります。限度額の対象となるサービスについては、上限を超えた分は、全額が自己負担になります。
今のデイサービスと、ケアマネはどうなるか
ここが、いちばん知っておいてほしいところです。
小規模多機能型居宅介護を利用すると、今まで利用していたデイサービスや訪問介護などは、原則として継続できません。
一方で、訪問看護や福祉用具貸与など、併用できるサービスもあります。くわしくは、前の項目のとおりです。範囲は、担当のケアマネジャーか、事業所に確認してください。
担当のケアマネジャーも、変わります。小規模多機能型居宅介護の事業所には、ケアマネジャーが1人以上いて、そのケアマネジャーが、登録した方のケアプランを作ります。
今のデイサービスが気に入っている方、今のケアマネジャーに慣れている方は、特に気をつけてください。
「泊まれるようになるなら」と、よく知らないまま契約してしまうと、通い慣れた場所や、顔なじみの人と離れることになります。
メリットと、デメリット
メリット
- 同じ事業所の、顔なじみの職員さんから、通い・訪問・泊まりの支援を受けられる
- ご本人の状態や希望に合わせて、組み合わせを変えられる
- 通いで慣れた場所で、泊まりも使える
自宅に来て、掃除や、服薬のお手伝い、おむつ交換などをしてくれる職員さんが、通いにも、泊まりにもいる。事業所によっては、通いや泊まりのときに、その職員さんが迎えに来てくれることも可能です。
家で顔を合わせて、関係ができると、「あなたがいるところなら、行ってみようかな」と思う方もいます。

デイサービスやショートステイに抵抗がある方にとっては、この関係づくりが、いちばん大切だと私は思っています。
デメリット
- 今のデイサービスやヘルパーさんが、原則として使えなくなる
- 担当のケアマネジャーが、事業所のケアマネジャーに変わる
- 泊まりは、希望した日に、必ず使えるとは限らない
- 登録できる人数に限りがあるので、事業所に空きがないと使えない
- 事業所によって、支援の中身に差がある
医療的なケアが必要なら、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
小規模多機能型居宅介護に、訪問看護の機能を加えた、「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」というサービスもあります。
通い・訪問介護・泊まりに加えて、看護師による訪問看護を、一体的に利用できるのが特徴です。
退院直後の在宅生活への移行や、医療のニーズが高い方、がん末期などの看取り期の在宅生活を支えるサービスとして、厚生労働省の資料で紹介されています。
利用できるのは、要介護1から5の方です。看多機も事業所への登録が必要で、担当のケアマネジャーは、事業所のケアマネジャーに変わります。
医療的なケアにどこまで対応できるかは、事業所によって違います。必要な処置に対応できるか、事前に確認してください。
契約前に、確認したいこと

小規模多機能型居宅介護は、決めてから後悔しても、すぐには戻りにくいサービスです。契約の前に、次のことを事業所に聞いてみてください。
契約前に聞いておきたいこと
- 訪問では、どんなことをしてくれるのか。回数や時間は、どう決めるのか
- 泊まりは、希望した日に使えるのか。空いていないときは、どうなるのか
- 今のデイサービスやヘルパーは、どうなるのか。今の担当のケアマネジャーとは、どう引き継ぐのか
- 食費、宿泊費など、基本の月額のほかに、いくらかかるのか
- 通いを嫌がる場合は、どう関わってくれるのか
- 見学や、体験で使うことはできるのか
お住まいの地域に、小規模多機能型居宅介護の事業所があるかどうかは、市区町村や、地域包括支援センター、担当のケアマネジャーに聞くとわかります。
小規模多機能は、通い・訪問・泊まりを組み合わせられる、便利な仕組みです。でも、大切なのは、ご本人がどんな暮らしを続けたいのか。その希望に合わせて支援を考えてくれる事業所を選んでほしいと思います。
小規模多機能は、事業所によって、支援の中身が大きく違うと感じています。
以前、私が担当していた利用者さんを小規模多機能に引き継いだあと、ご家族から相談を受けたことがありました。一方で、地域の見守りとつながりながら、認知症の方の在宅生活を支えていた事業所も知っています。
以前、私が担当していた利用者さんのために、小規模多機能の事業所を3か所探したことがあります。
同じ小規模多機能なのに、訪問での対応が難しい事業所もあれば、ご本人の暮らしに合わせて支援を考えてくれる事業所もありました。
同じ制度でも、事業所によって何が違うのか。私が実際に経験した2つの話を、次の記事で紹介しています。
泊まれるから、で選ばない。
今のデイサービスと、ケアマネジャーがどうなるかまで、わかってから決める。




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