良いケアマネの見分け方|「なぜ転ぶのか」を探るかどうかです

オハナさんとの日常

「良いケアマネの見分け方」をネットで調べると、だいたい同じことが書いてあります。

優しい。話をよく聞いてくれる。連絡が早い。困りごとを具体的な提案に変えてくれる。

どれも大事です。間違ってはいません。

実は以前、このブログで「良いケアマネの条件」を6つ書きました。

本人と家族の話を別々に聞いてくれる。連絡が早い。地域の情報をたくさん持っている。制度を分かりやすい言葉で説明できる。

今読み返しても、間違ったことを書いたとは思っていません。どれも大事です。

でも、20年ケアマネをしている私が「自分の母を任せるなら」と考えたとき、本当に見てほしいところを、まだ書いていなかったことに気づきました。

前の記事に書いたのは、ご家族から見えるケアマネの姿でした。

ケアマネの仕事には、ご家族から見えない部分がたくさんあります。そして良いケアマネかどうかの差は、たいていその見えない部分に出ます。

今日は、同業者の目から見た「良いケアマネ」の話をします。少し専門的な話も出てきますが、ご家族にも確認できることを最後にまとめますので、そこだけでも読んでいただけたらうれしいです。

「機嫌が悪いだけ」だと思っていました

以前、担当していた方が、急に怒りっぽくなったことがありました。

ご家族は「最近、機嫌が悪くて」とおっしゃっていました。認知症の症状が進んだのだろう、と受け止めておられました。

実際、認知症の方が怒りっぽくなることはあります。だから、その解釈は決して的外れではありません。

でも私は、少し引っかかりました。「急に」だったからです。

認知症のある方に急な変化が見られたとき、「認知症が進んだ」で片づけないようにしています。せん妄、感染症、脱水、薬の影響、脳の血管の病気。急な変化の裏には、別の理由が隠れていることがあるからです。

脳血管疾患を疑って、脳外科の受診をおすすめしました。検査の結果は、脳梗塞の初期でした。

すぐに治療が始まり、後遺症も残らず、元の生活に戻ることができました。

あのとき「認知症だから」で納得していたら
受診は遅れていたと思います。そして、後遺症が残っていたかもしれません。困りごとの後ろに何があるのかを考えるかどうかで、その方のこの先が変わってしまうことがあります。

困りごとに対応する人と、その原因まで考える人がいます

ケアマネの仕事は、ご家族の困りごとを聞いて、サービスにつなぐことだと思われています。それは半分正解です。

ただ、同じ困りごとでも、対応の仕方が二つに分かれます。

  • 夜中に何度も起きる → デイの回数を増やしてご家族を休ませる/薬の飲む時間、心臓、糖尿病、泌尿器の状態を確認する
  • よく転ぶ → 手すりをつける、歩行器を入れる/血圧の薬、脳梗塞の既往、神経の病気を疑う
  • 食べなくなった → 配食サービスを入れる/入れ歯、飲み込み、薬の副作用、気分の落ち込みを確認する

前者だけでも、その日の困りごとは軽くなります。ご家族は助かります。感謝もされます。

でも、原因が残ったままだと、また同じことが起きたり、少しずつ状態が悪くなったりすることがあります。

困りごとの背景は、ひとつではありません。住まいの環境、これまでの生活歴、ご家族との関係、認知機能。いろいろなものが絡んでいます。

ただ、その中に病気や体調の変化が隠れていることは、少なくありません。生活の問題に見えて、実は体の中で起きていることの表れだった。そういうことが、本当にあります。

「なぜ転ぶのか」を探る

頻繁に転ぶ方を担当したことがあります。

ご家族に聞いても「よく転ぶんです」以上のことは出てきません。それは当然で、ご家族は転んだ結果を見ているからです。

お宅にうかがったとき、その方は座っているときに右へ傾いていました。歩き出しの一歩目が、不安定でした。

パーキンソン病の方には、体が傾く、歩き出しがすくむ、といった特徴が出ることがあります。長年やっていると勘が働く、という言い方をされることもありますが、勘ではありません。知っていることと、目の前で見えていることを、頭の中で照らし合わせているだけです。研修で学べる範囲のことです。

主治医に、ご自宅での様子と気になる症状を具体的にお伝えしました。

ここが大事なところです。主治医の先生は、在宅の様子をご存じありません。診察室で数分お会いするのと、生活の場を見るのとでは、入ってくる情報がまったく違います。だから、こちらから伝えなければ伝わりません。

その後、神経内科への紹介状が出され、検査でパーキンソン病と分かりました。内服治療が始まり、それまで頻繁にあった転倒も、みられなくなりました。

転倒は「不注意」ではなく「症状」のことがあります
転倒が増えると、骨折します。大腿骨の付け根を骨折すると、それをきっかけに生活機能が大きく低下する方も少なくありません。だから「気をつけましょうね」で終わらせてはいけないのです。
どこで転ぶのか。いつ転ぶのか。どんなふうに転ぶのか。つまずくのか、崩れるように倒れるのか。そこに答えが隠れています。

これは、私の持論ではありません

ここまで読んで、「それはこの人が優秀なだけでは」と思われたかもしれません。

そうではないんです。

ケアマネには「適切なケアマネジメント手法」という考え方があり、法定研修のカリキュラムにも入っています。すべての方に共通して行う「基本ケア」と、高齢者に多い疾患ごとに支援のポイントを整理した「疾患別ケア」で構成されています。

つまり、病気やその経過を踏まえて生活の課題を考えることは、いまのケアマネジメントで重視されている視点です。私の思いつきでも、個人的なこだわりでもありません。

ひとつだけ補足させてください。疾患別ケアで取り上げられている病気を覚えていれば十分、という話ではありません。高齢者に多いから代表例として挙がっているだけです。大事なのは、目の前の困りごとの後ろにどの病気があるのかを考える、その習慣のほうです。

繰り返す病気ほど、予防が命に関わります

誤嚥性肺炎を二度繰り返した方がいらっしゃいました。

一度目で退院されたとき、ご家族は「治ってよかった」と安心されていました。その気持ちは、よく分かります。

でも、誤嚥性肺炎は繰り返します。そして、繰り返すたびに体力が落ちて、回復しにくくなっていきます。命に関わる病気です。

二度目のあと、口腔ケアの見直しと、言語聴覚士(ST)の訪問をおすすめしました。飲み込みの状態を評価してもらい、食べ方や食事の形態も含めて見直すためです。

少なくとも私が担当している間、三度目の誤嚥性肺炎は起きませんでした。

心臓の病気も同じです。心不全も、入退院を繰り返すうちに身体機能が低下し、以前の生活に戻りにくくなることがあります。

一度目を乗り切ったら終わり、ではありません。二度目をできるだけ防ぐために、何ができるかを考える。そこまでがケアマネの仕事だと思っています。そしてそれは、ご本人とご家族だけでは、なかなか気づけないところでもあります。

主治医と、何をやり取りしているか

ご家族から一番見えにくいのが、ここです。

受診に付き添ってくれるケアマネは、丁寧だと思われます。実際ありがたいことです。でも毎回は付き添えませんし、付き添いの有無より大事なことがあります。

聞くべきことを、聞いているかどうかです。

今は電話や連絡票でやり取りできます。手間としては、そう大きくありません。それでも、やっている人とやっていない人がいます。

何を確認するかというと、たとえばこういうことです。

  • 食事の制限(塩分、水分、糖分、飲み込みの状態に合わせた形態)
  • 活動の制限(どこまで動いてよいか、やってはいけない動作はあるか)
  • 入浴の可否と注意点(お湯の温度、時間、体調が悪いときの判断)

これが共有されていないと、何が起きるか。

心臓が弱っている方が、熱いお湯に長く浸かる。塩分制限があるのに、配食が普通食のまま。背骨を圧迫骨折した直後に、前かがみになる運動をしている。

怖いのは、必要な情報が事業所まで届いていないことです。

デイサービスや訪問介護のスタッフは、知らされていない医療上の注意点までは把握できません。当たり前のことです。伝わっていなければ、いつもどおりの入浴になりますし、いつもどおりの食事が出ます。

だから、情報を流す人が必要なんです。そこが抜けると、支えるチーム全体が何も知らないまま動くことになります。そしてご家族は、何かが起きるまで、そのことを知りません。

なぜ、この視点が抜けてしまうのか

看護師出身のケアマネは、この視点を持っていることが多いと感じます。

ただ、これは資格の問題ではありません。研修は基礎資格に関係なく、病気に着目する内容になっています。誰でも持てる視点です。それでも抜けてしまう人がいる。

資格の差ではなく、どこを見ているかの差です。

そして難しいのは、この「病気まで見る視点」が、ご家族からは評価しにくいことです。

ご家族にとって、持病は病院の先生が診るものです。夜中に起きる、転ぶ、食べない、というのは生活の問題です。この二つが、頭の中で別々の引き出しに入っています。

だからケアマネが「血圧のお薬は何時に飲んでいますか」と聞くと、「なぜ介護の人がそんなことを」と思われることがあります。逆に、生活の話だけをするケアマネのほうが「介護のことに集中してくれている」と感じられることもあるのです。

ご家族が確認できること

専門的な話が続いたので、今日から確認できることをまとめます。

ひとつめ ケアプランに、病名が書いてありますか
生活の困りごとだけが並んでいて、持病の名前がどこにも出てこないプランがあります。一度、見てみてください。

ふたつめ 「先生に確認してもらえますか」と言ってみてください
すぐ動く人と、「主治医の先生に聞いてみてください」とご家族に返す人がいます。ここに差が出ます。

みっつめ 困りごとを伝えたとき、質問が返ってきますか
「よく転ぶんです」に対して「では手すりを」だけで終わるのか。いつ、どこで、どんなふうに転ぶのかを聞かれるのか。この違いは、大きいです。

全部そろっていなくても大丈夫です。人には得意分野があります。認知症に強い人、医療との連携に強い人、ご家族の調整が上手な人。それは能力の差というより、専門性の違いです。

ご自身の困りごとと、その人の得意なところが合っているか。その視点で見ていただけたらと思います。

それでも、自分の母のことは分かりません

ここまで偉そうに書いてきましたが、正直に告白します。

自分の母のことになると、私のプロの目は、まったく働きません。

認知症だと分かっているのに、怒ってしまいます。何度も同じことを聞かれて、声を荒らげた日もあります。仕事では他のご家族に「病気のせいですよ」と説明している、その私が、です。

実は、母の担当ケアマネは私です。

「お母さんは娘がケアマネだから安心だね」と言われることがあります。

たしかに、介護保険制度のことなら分かります。サービスも知っています。手続きもできます。

でも、母の変化に誰より早く気づけるかと言われたら、そうでもありません。むしろ、近すぎて見えないことがあります。

「また同じことを言ってる」
「今日は機嫌が悪い」
「最近、動かなくなったな」

仕事なら、その後ろに何があるのかを考えるのに、母だとそこで止まってしまう。

距離が近いほど、専門職の目は働かなくなります。母は私にとって、利用者さんではなく、母だからです。

だから時々思います。私にも「それ、本当に認知症のせいかな?」と言ってくれる人がいたらいいのに、と。ケアマネである私を、外から見てくれるケアマネがいたらいいのに、と。

でも現実には、母の担当は私です。

だから今の私は、ケアマネであると同時に、介護保険制度をよく知っている娘なのだと思っています。

皆さんも、それでいいんです。

家族だから見えないことがあります。家族だから気づけないことがあります。それは、当たり前のことです。

だから、全部をご家族が見つけなくていいんです。

「最近ちょっと変なんです」
「なんとなく気になるんです」

そこまでを、ケアマネに渡してください。

その「なんとなく」の後ろに何があるのかを考える。それが、私が思うケアマネの仕事です。

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