老健と特養の費用を比較|老健のほうが高い理由と医療費控除の違いをケアマネが解説

介護施設のこと

「老健も特養も、公的な施設なんですよね? では、費用も同じくらいですか?」

ケアマネとして施設のご相談を受けていると、本当によく聞かれる質問です。

お気持ちはよくわかります。

どちらも介護保険制度上の施設なので、「費用も同じくらいだろう」と思いますよね。

しかし、実際に見積もりを取ったご家族からは、こんな声がよく聞かれます。

「えっ、老健のほうが高いんですか?」

そうなんです。同じ介護保険施設でも、条件によっては、老健のほうが特養より月2〜3万円ほど高くなることがあります。

ただし、この話には続きがあります。

老健の費用は、特養と比べて医療費控除の対象となる範囲が広いため、確定申告によって税負担が軽くなる可能性があります。

月額費用だけでなく、医療費控除まで含めて考えると、老健と特養の実質的な負担の差が縮まることもあるのです。

老健と特養の費用の違いを、現場の実感とあわせて解説します。

老健と特養の月額費用の目安

まずは、老健と特養の違いを簡単に整理します。

特養
(特別養護老人ホーム)
老健
(介護老人保健施設)
月額費用の目安6〜15万円8〜15万円
主な対象原則要介護3〜5要介護1〜5
入所期間長期的な入所が基本定期的に継続入所の必要性を検討
主な目的長期的な生活の場在宅復帰に向けたリハビリ

※費用は部屋のタイプ、多床室か個室か、介護度、所得、各種加算などによって大きく変わります。あくまで目安です。

私がご相談を受ける中でも、同じような介護度や部屋タイプで比較した場合、老健の見積もりが特養より月2〜3万円ほど高くなるケースが見られます。

「介護保険施設だから安いだろう」と思って老健の請求書を見ると、

「思っていたより高い……」

と驚かれるご家族は少なくありません。

ちなみに、特養と有料老人ホームでは、初期費用や月額費用の仕組みが大きく異なります。違いが気になる方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

なぜ老健のほうが高くなるの?

老健の費用が高くなりやすい理由は、特養よりも医療管理やリハビリの体制が手厚いからです。

① 医師の配置が義務付けられている

老健には医師の配置が義務付けられており、医学的な管理のもとで介護やリハビリが行われます。

特養より医療管理の体制が整っている分、基本となる施設サービス費も高めに設定されています。

ただし、病院のように24時間いつでも医師が診察する施設という意味ではありません。

② 専門職によるリハビリを受けられる

老健には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門職が配置され、在宅復帰に向けたリハビリが行われます。

施設の体制やリハビリの内容によっては、各種加算が算定されることもあります。

③ そもそも施設の目的が違う

老健と特養では、施設の役割そのものが異なります。

特養

生活の場として
長期的に暮らす施設

生活援助が中心

費用は比較的抑えられやすい

医療費控除は
対象費用の2分の1

老健

在宅復帰を目指す施設

医療管理やリハビリが充実

費用は高くなりやすい

医療費控除は
対象費用の全額

つまり、老健の費用が高いのは、医療管理やリハビリ体制が整っているためです。

実際に、「特養より高くても、専門職のリハビリを受けられる老健を選びたい」と、積極的に老健を選ばれるご家族もいます。

費用の差は、提供される医療管理やリハビリの違いでもあるのです。

💡 ケアマネのひとこと

「老健は比較的入りやすそうだから、とりあえず老健へ」と考えるご家族もいます。

しかし、老健は長期的な生活の場を目的とした施設ではありません。入所後は定期的に、継続入所の必要性や今後の退所先が検討されます。

「安く長く入れる施設」のつもりで入所すると、数か月後に再び施設探しが必要になることもあります。費用と入所期間は、セットで考えておきましょう。

施設費の負担を軽くできる3つの制度

月額費用だけを見ると、老健のほうが高く感じるかもしれません。

しかし、利用できる制度を知っているかどうかで、実際の負担は変わります。

混同しやすい3つの制度を整理します。

① 高額介護サービス費

介護サービス費の自己負担額には、所得区分に応じた月ごとの上限が定められています。

上限を超えて支払った分は、申請によって払い戻されます。

✅ 対象になるもの:施設サービス費など、介護保険サービスの自己負担額

❌ 対象にならないもの:食費/居住費/理美容代/日用品代/その他の日常生活費

「食費や部屋代も、高額介護サービス費で戻ってくる」と誤解されることがありますが、食費や居住費は対象外です。

食費や居住費を軽減する制度は、次に説明する補足給付です。

② 補足給付(特定入所者介護サービス費)

所得や資産が一定の要件を満たす方は、申請によって施設の食費や居住費の負担を軽減できます。

補足給付は、特養だけでなく老健も対象です。

特養の費用が大幅に安くなっているケースでは、この補足給付が適用されていることが少なくありません。

反対に、補足給付の対象にならない方は、特養でもある程度の費用がかかります。

③ 医療費控除

老健と特養の違いが大きく表れるのが、確定申告で利用できる医療費控除です。

医療費控除とは?

1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得控除を受けられる制度です。

基準となる金額は原則10万円ですが、総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%となります。

医療費控除を受けることで、所得税の還付や翌年度の住民税の軽減につながる可能性があります。

ただし、支払った費用がそのまま戻ってくる制度ではありません。

老健は対象費用の全額、特養は2分の1

医療費控除の対象となる範囲には、次の違いがあります。

老健:施設サービスの対価として支払った、介護費・食費・居住費の自己負担額のうち、医療費控除の対象として領収書に記載された金額の全額

特養:対象となる介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1

つまり、同じ金額を支払っていても、老健のほうが医療費控除の対象額は大きくなる傾向があります。

実際にいくらくらい負担が軽くなるの?

「結局、いくら戻るの?」

ここが一番気になりますよね。イメージをつかむために、単純化した例で考えてみます。

【概算例】施設の領収書に記載された医療費控除の対象費用が、年間120万円だった場合

老健:120万円が対象

特養:同じ対象費用なら、2分の1にあたる60万円が対象

老健のほうが控除対象額が大きいため、税負担の軽減額も大きくなる傾向があります。所得や他の医療費の状況によっては、老健と特養で数万円以上の差が生じるケースもあります。

ただし、実際の還付額や住民税の軽減額は、次の条件によって変わります。

・所得額
・適用される税率
・扶養の状況
・他に支払った医療費
・高額介護サービス費の払い戻し額
・他の所得控除

※税金をほとんど納めていない方は、控除対象額が大きくても、還付が少ない、または還付されない場合もあります。また、理美容代、日用品代、特別なサービス費用などは医療費控除の対象に含まれません。実際の対象額は、必ず施設が発行した領収書で確認してください。

💡 ケアマネのひとこと

「老健では、施設の領収書に記載された対象費用の全額が医療費控除の対象になります」とお伝えすると、「知らなかった!」と驚かれるご家族は少なくありません。

制度について詳しく説明を受ける機会がないこともあるため、老健や特養を利用したら、領収書の「医療費控除対象額」を確認しておきましょう。

医療費控除で損をしないための注意点

① 高額介護サービス費で払い戻された金額を差し引く

高額介護サービス費などで補てんされた金額がある場合は、その分を差し引いて医療費控除額を計算します。

同じ費用について、払い戻しと医療費控除を重ねて受けることはできません。

② 領収書は5年間保管する

確定申告では、施設が発行した領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成します。

領収書の提出は原則不要ですが、税務署から提示や提出を求められる場合に備えて、確定申告期限から5年間保管する必要があります。

③ 還付申告は5年以内なら可能

医療費控除を知らずに申告していなかった場合でも、還付申告は原則として5年以内であれば行えます。

過去に老健や特養を利用していた方は、施設の領収書が残っていないか確認してみる価値があります。

施設入所中のおむつ代はどうなる?

在宅介護で使用するおむつ代は、一定の要件を満たし、医師の「おむつ使用証明書」などがあれば医療費控除の対象になります。

一方、特養や老健の入所者のおむつ代は、原則として施設サービス費に含まれています。

そのため、入所中のおむつ代について、別におむつ使用証明書を用意する必要はありません。

施設が発行する領収書に記載された医療費控除対象額を確認してください。

結局、老健と特養のどちらを選べばいいの?

ここまで費用について説明してきましたが、最も大切なのは、老健と特養を単純に「安いか、高いか」だけで比べないことです。

老健は、病院と自宅の間、または在宅生活と次の生活の場との間をつなぐ施設です。

現場では、次のような利用があります。

・骨折や脳梗塞で入院したあと、もう少しリハビリを続けるために老健へ入所する
・在宅介護が難しくなり、特養への入所を申し込みながら老健で心身の状態を整える

【老健】
リハビリや医療管理を受けながら、在宅復帰や次の生活の場への移行を目指す施設です。入所期間は本人の状態や施設の方針によって異なり、3〜6か月程度が一つの目安として説明されることもあります。

【特養】
生活の場として、長期的な入所を想定した施設です。原則として要介護3以上の方が対象であり、地域や施設、本人の緊急性によっては、入所まで時間がかかることもあります。

つまり、

リハビリをして次の暮らしに備えたいのか

長期的に暮らせる場所を探しているのか

によって、選ぶ施設は変わります。

ケアマネとしておすすめする考え方

・退院後も専門的なリハビリが必要
→ 老健を検討する。医療費控除の対象額も確認する

・在宅生活の継続が難しく、長く暮らせる場所が必要
→ 特養を申し込む。入所までの生活をケアマネと相談する

・特養への入所まで時間がかかりそう
→ 老健を次の生活への橋渡しとして利用する方法もある。ただし、長期入所を前提とした施設ではないことを理解しておく

費用のことも含めて迷ったときは、担当のケアマネや地域包括支援センターに相談してください。

「お金のことは聞きにくい」と思うかもしれません。

しかし、お金の問題こそ、早めに専門職へ相談することが大切です。

よくある質問

老健と特養では、どちらが安いですか?

一般的には、特養のほうが安くなるケースが多いです。ただし、部屋のタイプ、介護度、所得、各種加算、補足給付の適用状況によって変わるため、実際の見積もりを比較してください。

老健には何か月いられますか?

法律で一律に「3か月」「6か月」と決められているわけではありません。ただし、老健は在宅復帰や次の生活への移行を目指す施設であり、長期的な入所を目的とした施設ではありません。入所後は定期的に、本人の状態や継続入所の必要性、退所先などが検討されます。

老健でも補足給付は利用できますか?

所得や資産が一定の要件を満たせば、老健でも補足給付を利用できます。申請が必要なため、市区町村の介護保険窓口や担当のケアマネに確認してください。

医療費控除は自動的に受けられますか?

自動では受けられません。確定申告が必要です。申告を忘れていた場合でも、還付申告は原則として5年以内であれば行えます。

次に読んでほしい記事

施設全体の種類や違いを整理したい方は、こちらの記事をご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました