「見学に行った時はとても良さそうだったのに、利用を始めたら思っていたのと違った」
そんな話を、私はこれまで何度も聞いてきました。
建物はキレイだった。パンフレットも立派だった。説明も丁寧だった。
なのに、いざ利用を始めたら、なんか違う。
親の介護施設を探すとき、多くのご家族が見学に行きます。
パンフレットを取り寄せて、ネットで口コミを調べて、見学の予約を入れて。
でも、いざ見学に行くと「何を見ればいいのかわからない」という方がとても多いんです。
私はケアマネジャーとして20年、数えきれないほどの施設やデイサービスを見てきました。
自分の母・オハナの通うデイサービスを探した時も、やっぱり迷いました。
ケアマネをやっていても、施設選びは難しい。
一人ひとりニーズが違うから、「ここが正解」と言い切れる施設なんてないんです。
でも、だからこそ「ここだけは見てほしい」と思うポイントがあります。
今日は、20年の現場経験から私が見学で本当に見ていることをお話しします。
家族がつい見てしまうところ
見学に行くと、つい目が行くのはこういうところじゃないでしょうか。
建物が新しくてキレイ。
お風呂が広くて豪華。
リハビリの機械がたくさんある。
パンフレットが立派で写真もきれい。
わかります。私だって気持ちいいなと思います。
正直に言うと、今の私が自分で入るなら、綺麗なところでゆっくり過ごしたいです。
体が動いて、自分でやりたいことができるうちは、快適な環境で適度にひとりの時間があるのが理想だなって思います。
でも。
自分で動くことが難しくなったら?
自分から活動するのが難しくなって、いる場所の環境がそのまま生活の質になっていくとしたら。
その時に大切なのは、建物の綺麗さよりも「看てくれる人」と「施設の方針」なんじゃないかと、私は思っています。
私が見学で本当に見ている6つのポイント
❶ 職員さんの関わり方
私が見学でまず見るのは、建物ではなく職員さんです。
利用者さんに対して、目線を合わせて話しているか。
名前で呼んでいるか。
笑顔があるか。
急かしていないか。
介護の技術は後からでも身につきます。
でも、人としての関わり方は、その事業所の文化がそのまま出るんです。
立ったまま上から声をかけている職員さんと、しゃがんで目を合わせてくれる職員さん。
その差は、見学の数分でもわかります。
❷ 利用者さんの表情と過ごし方
施設がピカピカなのに、利用者さんが全員テレビの前に座っているだけ。
職員さんはカウンターの中。
そんな光景は、残念ながら珍しくありません。
逆に、利用者さんと職員さんが笑いながら話していたり、一緒に折り紙をしていたり、庭を散歩していたり。
そんな施設は空気がまるで違います。
認知症が進んでいる方は、表情が乏しくなることがあります。
でも、そのなかでも穏やかな顔をしているか、何かしてもらって反応しているか。
利用者さんの表情は、その施設の「本当の質」を映す鏡です。
もうひとつ、見てほしいことがあります。
利用者さんを見る時は、ひとりでいる時の表情だけでなく、職員さんが声をかけた時の反応にも注目してみてください。
名前を呼ばれた時に笑顔になるか。
「○○さん、お茶にしましょうか」と声をかけられた時に、自然に返事をするか。
認知症があっても、人は安心できる相手には反応します。
そのやり取りには、普段の関係性が表れます。
ほんの数秒のやり取りですが、見学ではそこが一番リアルな情報です。
実は、母・オハナのデイサービスを選ぶ時も、私は利用者さんの表情を見ていました。
認知症の母は「ここがいい」「ここは嫌」と上手に説明できません。
だからこそ、利用者さんたちがどんな顔で過ごしているかを見たんです。
笑顔が多いか。
職員さんに自然に話しかけているか。
私はケアマネとしてではなく、母を預ける娘として、設備よりもそちらの方が気になりました。
❸ 活動や外出の機会があるか
ケアマネとしていろんな施設を見てきましたが、外出レクリエーションがまったくない施設と、月に一回でも花見やお買い物に出かける施設では、利用者さんの表情が全然違います。
毎日施設の中だけで過ごすのと、たまにでも外の空気を吸えるのと。
その差は小さいようで、とても大きい。
見学の時に「外出の行事はありますか?」と聞いてみてください。
普段のレクレーションや外出レクレーションのお写真を見せてもらってみてください
具体的に答えてくれる施設は、ちゃんと考えて取り組んでいる施設です。
❹ 個別対応があるか
認知症だからといって、全員が同じではありません。
お花が好きな人。将棋が好きな人。歌が好きな人。外に出たい人。
一人ひとり、好きなことも落ち着くことも違います。
良い事業所は、「この方はお花が好きなんですよ」「今日は一緒に庭を見に行きました」みたいな話が自然に出てきます。
利用者さんを「利用者」ではなく、ひとりの人として見ているんですよね。
私が担当していた利用者さまの話をさせてください。
その方の施設では、年に一度の誕生日にご本人の願い事を叶えてくれるんです。
その方がお願いしたのは、亡くなった旦那さんとよく行っていたラーメン屋さんに連れて行ってもらうこと。
職員さんが付き添って、一緒にラーメンを食べに行ったそうです。
これが「個別対応」の本当の意味だと、私は思っています。
❺ 施設の方針が明確か
見学の時に、ぜひ聞いてみてほしい質問があります。
「こちらの施設が大切にしていることは何ですか?」
良い施設は、即答します。
「外出を大切にしています」
「最後まで自分でできることを支援します」
「認知症の方の尊厳を大切にしています」
言葉は施設ごとに違っても、自分たちが何を大切にしているかがはっきりしているんです。
逆に、「うーん…皆さん仲良く…」みたいな曖昧な答えしか出てこない場合は、少し注意が必要かもしれません。
理念がパンフレットに書いてあっても、現場の職員さんが自分の言葉で語れるかどうか。
そこに、施設の方針が本当に浸透しているかどうかが表れます。
❻ 連絡・情報共有の質
入所や利用が始まった後のことも大切です。
よく連絡をくれる事業所と、全然連絡をくれない事業所。
同じ介護サービスでも、この差はびっくりするほど大きいです。
「今日はこんなことがありました」「最近こういう変化があります」
こまめに教えてくれる事業所は、ちゃんと見てくれている証拠です。
見学の時に「普段の様子はどうやって教えてもらえますか?」と聞いてみるのもいいですよ。
連絡帳があるのか、電話をくれるのか、アプリを使っているのか。
その答え方にも、施設の姿勢が表れます。
「何をしているか」より「誰とどう過ごしているか」
ここまで6つのポイントをお伝えしましたが、一番大切なことをお話しさせてください。
ご家族から、こんな報告をいただくことがあります。
「今日は折り紙をしたそうです」
「歌を歌ったみたいです」
「体操をしたそうです」
でも、認知症が進んでいる方は、活動の内容を覚えていないこともあります。
「何をした?」と聞いても、「わからない」と返ってくることも珍しくありません。
それを聞いて、「行っても意味がないのかな」と思ってしまう家族もいます。
でも、そうじゃないんです。
折り紙をしたことは忘れても、「優しくしてもらった」は残ります。
歌を歌ったことは忘れても、「楽しかった」は残ります。
体操をしたことは忘れても、「大事にされた」は残ります。
認知症になっても、感情の記憶は最後まで残ることが多いんです。
だから私は、レクリエーションの種類や回数よりも、職員さんが利用者さん一人ひとりにどう関わっているかを見ます。
立派なプログラムがあっても、流れ作業でこなしているだけの施設もあります。
逆に、特別なプログラムはなくても、職員さんが隣に座って一緒にお茶を飲んでいるだけで、利用者さんが穏やかな施設もあります。
活動の「内容」は忘れても、その時間が「安心できたかどうか」は、ちゃんとその人の中に残っている。
設備やプログラムは「目に見えるもの」。
でも本当に大切なのは、「目に見えにくいもの」です。
迷ったらケアマネに相談してください
ここまで読んで、「そんなにたくさん見られない…」と思った方もいるかもしれません。
大丈夫です。全部を一人で判断しなくていいんです。
ケアマネジャーは、施設やデイサービスの見学に同行することもできます。
一緒に見て、気になることを聞いて、比較して。
そのためにケアマネがいます。
「親にとってどこがいいか」を一緒に考えてくれる人がいるだけで、施設選びのプレッシャーはずいぶん軽くなるはずです。
迷った時は、遠慮なく担当のケアマネさんに相談してみてくださいね。
まだ担当のケアマネさんがいない方や、まずは地域にどんな施設があるのか知りたい方は、介護施設の検索サイトを使ってみるのもひとつの方法です。
条件を入れて絞り込めるので、施設の種類や費用感を比較しやすくなります。
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私は20年間、たくさんの施設を見てきました。
でも最後に残るのは、豪華なお風呂でも立派な建物でもありません。
「あの職員さんに会えるのが楽しみ」
認知症が進んでも、その気持ちは案外残るものです。
利用者さんがそう思える場所でした。
親に合う施設とは、設備が一番整っている場所ではなく、その人らしく過ごせる場所なのかもしれません。
見学で見てほしい6つのポイント
❶ 職員さんが利用者さんにどう関わっているか
❷ 利用者さんの表情と過ごし方
❸ 活動や外出の機会があるか
❹ 一人ひとりに合わせた個別対応があるか
❺ 施設の方針が明確で、現場に浸透しているか
❻ 連絡や情報共有をしっかりしてくれるか




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