「特養は安いけど、何年も待つんでしょう?」
「有料老人ホームなんて、うちにはとても払えない…」
介護施設を探し始めたご家族から、私が本当によく聞く言葉です。
でも、20年ケアマネをしてきた私の実感を先にお伝えすると
その思い込み、半分は当たっていて、半分は違います。
この記事では、パンフレットには書いていない「特養と有料の費用と待機のリアル」を、現場の視点でお話しします。
特養と有料老人ホーム、まずは基本だけおさらい
- 特別養護老人ホーム(特養):公的施設。原則要介護3以上。費用が比較的安く、終身利用できる
- 有料老人ホーム:民間施設。「介護付」と「住宅型」がある。入居のハードルは低めだが、費用は施設による
それぞれの詳しい特徴は、こちらの記事にまとめています。
ここからが本題です。
そもそも要介護1・2の方は、特養に入れません
比較の前に、大前提をひとつ。
特養に入居できるのは、原則「要介護3以上」の方です。
つまり、要介護1・2の段階で「そろそろ施設を…」と考えるなら、選択肢は有料老人ホーム(またはサ高住など)が中心になります。「特養か有料か」で迷う以前に、そもそも特養が選択肢に入らないケースがあるんです。
「まだ介護度が低いうちに、本人が元気なうちに住み替えたい」というご家庭こそ、有料の情報をしっかり集めておくことをおすすめします。
※要介護1・2でも、認知症の症状や家庭の事情によっては特例入所が認められる場合がありますが、ハードルは高めです。
【リアルその1】月額費用、実はそんなに変わらないことが多い

「有料は高い」——このイメージ、実は要注意です。
もちろん、上を見ればキリがありません。月50万円、100万円という高級ホームも実際にあります。
有料の上限は、青天井です。
でも一方で、地域の一般的な有料老人ホームなら、特養の多床室(相部屋)と月額がほとんど変わらない、というケースは珍しくありません。私も相談の場面で、実際に見積もりを並べたご家族が「え、こんなに差がないの?」と驚かれることがよくあります。
ただし、下限には目安があります。有料がどんなに安くても、特養で「負担限度額認定証」を使った場合の第3段階②〜第4段階くらいの料金水準が下限ライン。それ以上は下がりません。
つまりこういうことです。
- 世帯の所得や資産が少なく、負担限度額認定で第1〜2段階になる方 → 特養が圧倒的に安い
- 認定の対象にならない、または第3〜4段階の方 → 特養と有料の差は意外と小さい
「うちはいくらになるのか」は、負担限度額認定の段階次第で大きく変わります。ここは必ず確認してほしいポイントです。
モデルケースで月額を比べてみると
言葉だけでは分かりにくいので、実際の相談でよくあるケースを例に比較してみます。要介護3・多床室(特養)と地域の一般的な有料ホームで、月額のめやすを並べたものです。
| ケース | 月額のめやす |
|---|---|
| 特養・多床室 (負担限度額認定 第2段階) | 約6〜7万円 |
| 特養・多床室 (第4段階・認定なし) | 約10〜12万円 |
| 地域の一般的な有料ホーム (家賃・管理費・食費+介護サービス自己負担) | 約12〜16万円 |
※金額は地域や施設によって大きく異なります。あくまで比較イメージのためのめやすです。実際の金額は、施設の見積もりと負担限度額認定の結果で必ず確認してください。
第4段階の方なら、特養と有料の差は月に数万円程度——「思っていたより差がない」というのは、こういうことです。
【リアルその2】特養の待機、昔ほど長くない

「特養は申し込んでから何年も待つ」——これも、少し古い情報になりつつあります。
たしかに特養のほうが待つ印象はあります。でも最近は施設の数自体が増え、医療に特化した施設なども増えてきました。その結果、多床室であれば数ヶ月で順番が来ることも珍しくなくなっています。
(個室ユニット型は今も待機が長め、という傾向はあります)
【リアルその3】「待機中に有料へ→そのまま定住」がよくある着地点
実際にあった相談をひとつ(個人が特定されないよう、細部は変えています)。
認知症が進んできたひとり暮らしの方。遠方に住むご家族は心配で夜も落ち着かず、ご本人も「ひとりは不安。早く入居したい」という希望でした。
特養だと順番が読めない。そこで、比較的早く入れる地域の有料ホームを見学してもらったところ、待機順が2番目。その場で申し込み、3ヶ月後に入居となりました。
そして、こういうケースで実は多いのが——特養の順番が来ても、そのまま有料で暮らし続けるという選択です。
理由はシンプルで、
- 料金がさほど変わらない
- せっかく慣れた環境を、コロコロ変えたくない(ご本人にとって引っ越しは大きな負担です。特に認知症のある方には)
「特養の待機場所」のつもりで入った有料が、そのまま終の住まいになる。現場ではよくある、そして悪くない着地点だと私は思っています。
【リアルその4】住宅型有料の隠れたメリット「ケアマネが変わらない」
これはあまり知られていませんが、住宅型有料老人ホームなら、在宅のときのケアマネがそのまま担当を続けられることがあります。
介護付有料や特養に入ると、ケアマネは施設の職員に変わります。でも住宅型なら、これまでの経過を全部知っている、信頼関係のあるケアマネが引き続き伴走できる。施設と利用者の間に外部の目が入ることで、中立・公正な視点が保たれるという良さもあります。
こんな場合は、早めに施設探しを始めてください

最後に、ケアマネとしてどうしても伝えておきたいことがあります。次のような状況に心当たりがあるなら、施設探しは「まだ先の話」ではありません。
- 認知症が進み、ひとり暮らしが不安になってきた
- 家族が遠方で、頻繁に様子を見に行けない
- 転倒や救急搬送が増えてきた
- 介護する家族が疲れ切っている
- 本人が「ひとりは不安」と話している
施設探しは、「もう無理」となってから始めると選択肢が少なくなります。追い詰められた状態では、比較も検討もできず、「空いているところに入るしかない」となりがちです。
まだ余裕があるうちに、見学だけでもしておく。それだけで、いざという時に慌てずに済みます。
まとめ:「特養か有料か」で迷ったら
- 要介護1・2なら、そもそも特養は対象外。有料が現実的な選択肢
- 有料は「高い」と決めつけない。特養多床室と大差ないことはよくある
- ただし下限は特養第3段階②〜第4段階水準。負担限度額認定の段階を必ず確認
- 特養の待機は短くなってきている。多床室なら数ヶ月のことも
- 「待機中に有料→そのまま定住」は現実的で、悪くない選択肢
- 住宅型ならケアマネを変えずに済むメリットも
そして一番大事なこと。この判断は、ご本人の状態・お金・地域の施設事情が絡む、かなり個別性の高い話です。
担当のケアマネジャーに「特養と有料、うちの場合はどっちが現実的ですか?」と率直に聞いてみてください。地域の施設の空き状況や料金の相場は、地域のケアマネが一番よく知っています。




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