認知症の母がデイサービスを嫌がる。「息苦しい」の裏にあった気持ち

オハナさんとの日常

デイサービスから、昼に電話がありました。

「お母さんが息苦しいとおっしゃっていて。ただ、バイタルは問題ありません。お風呂も入られましたし、お昼の味噌ラーメンも全部召し上がっています」

様子を見てほしいとお願いし、デイの看護師さんは、オハナさんについている訪問看護師さんとも連携を取ってくれました。

その日の夜、オハナさんの「息苦しい」の背景にあるものに、私はようやく気づきました。

息苦しさや動悸には、心臓や肺の病気が隠れていることもあります。この記事は「気のせい」と判断してよいという話ではありません。まずは医療職に相談してください。

シュークリームを食べたあとに、また「息苦しい」

家に帰って、夕食のあと、オハナさんの大好きなシュークリームを出しました。

ごはんも全部食べて、シュークリームもおいしそうに食べて、機嫌はよさそうでした。

それを見ながら、私は何気なく言いました。

「明日もデイサービスだよ」

オハナさんが言いました。

「息苦しい」

さっきまで、シュークリームを食べていたのに。

訪問看護師さんの一言

すぐに訪問看護へ電話して相談しました。

酸素飽和度(SpO2)を測ると96%。熱も平熱。デイでのバイタルも問題なし。

その時点で測った数値には、大きな異常は見られませんでした。

そのとき、訪問看護師さんがこう言いました。

「デイサービスで、何か嫌なことがなかったかな。
認知症でも、嫌なことを感じたら、ちゃんと反応できるからね」

そこで、ようやく気づきました。

これは、子どもでいう登校拒否と同じなのかもしれない。

そういえば最近、朝起きると「行きたくない」と言っていました。

思い当たることが、ありました

少し前に、デイサービスでオハナさんが職員さんに注意されたことがありました。

オハナさんが自分の判断で動いてしまい、それを他の利用者さんもいる場で、強い口調で言われたようです。

管理者の方から謝罪があり、事業所としてはきちんと対応してくださいました。だから私は、それで済んだことだと思っていました。

済んでいなかったのは、オハナさんのほうでした。

私はそれほど気にしていなかった。でも本人にとっては、ものすごく嫌なことだったんだと思います。

忘れているだろう、と心のどこかで思っていたのかもしれません。認知症だから、覚えていないだろうと。

覚えていたかどうかは分かりません。でも、「あそこは嫌だ」という感覚が残っていたのかもしれません。

それが「行きたくない」という言葉や、「息苦しい」という訴えにつながっていたのではないか。私はそう考えました。

今日は、休ませました

翌朝も、オハナさんは「行きたくない」と言いました。

「そうだね。今日は休もうか」

そう言ったときのオハナさんの顔が、満面の笑みでした。

あんなにはっきり笑うのを、久しぶりに見た気がします。

ケアマネの私と、家族の私。頭の中はこんな感じです

オハナさんを休ませるかどうか。

ケアマネとして考えることと、家族として思うことは、同じではありません。

「今日はデイに行きたくない」

ケアマネとしての私

強く嫌がっている日に、無理に行かせなくてもいい。
落ち着かない状態で過ごすことになるかもしれないし、デイサービスそのものを嫌いになってしまうのも困る。

家族としての私

いや、でも行ってほしい(笑)

デイの日は安心して仕事に行けるし、お昼ごはんを作らなくていい。私にとっても、少しだけ力を抜ける日なんです。

「今日は休ませよう」

ケアマネとしての私

1日休むのと、休みが続くのは別。今日は休んで、気持ちを切り替えるのもひとつの方法。

ただし休みが続けば、活動量が減り、身体機能の低下につながることもある。続くようなら、その理由を探して次の手を考えたい。

家族としての私

休ませるのはいい。

でも……お風呂、どうする?

オハナさんは家ではなかなか入ってくれません。デイサービスに行くことで、清潔を保てているのが現実です。

においが出てくれば、一緒に暮らしている夫にも不快な思いをさせる。

「今日は休めばいい」で終わらないのが、家族なんですよね。

「本人の気持ちを大切に」

ケアマネとしての私

もちろん大切です。

本人が何を嫌だと感じているのか。どうすれば安心してデイサービスへ行けるのか。

事業所と情報共有して、席や職員の関わり方など、調整できることを考えていきたい。

家族としての私

それも分かってる。

でも、本人の気持ちだけでは生活は回らない。

お風呂にも入ってほしい。
この先も歩いていてほしい。
デイにも行ってほしい。

そして私だって、少し楽をしたい。

どっちも、私の本音です

ケアマネとしてなら、「本人の気持ちを尊重しながら、在宅生活を継続できる方法を考えましょう」と言えます。

でも家族として暮らしてみると、その「在宅生活を継続する」の中には、こんな事情がたくさん入っています。

お風呂に入ってほしい。
お昼ごはんを作らなくていい日がほしい。
一緒に暮らす夫にも無理をさせたくない。

どちらが正しいという話ではありません。

本人の気持ちも大事。
身体機能も大事。
清潔を保つことも大事。
そして、介護する家族の生活も大事。

だから今回は、「今日は休もう。でも、休みが続くようなら次を考えよう」

私はそこに線を引きました。

それでも、今日は休みました

結局、私が決め手にしたのは、訪問看護師さんの言葉でした。

「認知症でも、嫌なことを感じたら、ちゃんと反応できる」

オハナさんは、言葉で「あのとき嫌だった」とは言えません。でも、体で言っていました。

少なくとも私は、そう受け取りました。

「数字は正常だから大丈夫」で終わらせず、その訴えの背景に何があるのかを考えることも必要だったんだと思います。

だから今日は休む。明日のことは、明日考えます。

同じことが起きている方へ

デイサービスに行く朝だけ体調が悪くなる。数字に異常はないのに、本人はつらそう。

そういうとき、まずは医療職に相談してください。本当に体の問題であることもあります。順番を飛ばしてはいけません。

そのうえで、体に異常が見つからなかったなら、本人が何を感じているのかを考えてみてください。

担当のケアマネジャーに伝えてもらえれば、事業所に確認します。何かあったのか、席の場所を変えられないか、職員の関わり方を調整できないか。打てる手はあります。

そして、1日休ませることは、負けではありません。

私も、20年この仕事をしていて、今日ようやくそう思えました。

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