小規模多機能型居宅介護は、通い・訪問・泊まりを、同じ事業所で使えるサービスです。仕組みや料金は、前の記事に書きました。
この記事では、制度の説明ではなく、私が実際に見てきた2つの話を書きます。
同じ小規模多機能でも、事業所によって、支援の考え方が違う。そう感じた話です。
施設には入りたくない。でも、このままでは家族も限界だった
3年ほど前、私が担当していた利用者さんの話です。
その方は、大切な方とペットを、相次いで亡くされてから、夜になると不安が強くなっていました。
遠方に暮らすご家族には、毎晩のように、夜中に電話がかかってきました。
「寂しい」「怖い」
最初のうちは、ご家族が様子を見に来ていました。でも、遠方から何度も駆けつける生活には、限界があります。
やがて、ご家族から、施設に入ってほしいという話が出るようになりました。
でも、ご本人は、施設に入りたくありませんでした。思い出の詰まった家から、離れたくなかったのです。
当時は、デイサービスを週3回、訪問介護を週2回、利用していました。ヘルパーさんには、掃除と、お薬カレンダーの確認をお願いしていました。
ところが、夜の不安が強くなり、服薬管理も難しくなってきました。飲み忘れては困る、大切な薬もありました。
訪問を増やすと、要介護2の区分支給限度基準額では、収まりません。
必要な支援は、増えている。でも、施設には入りたくない。ご家族は、夜中の電話が続く生活に、限界を迎えている。
ご本人の希望も、ご家族の生活も、守れる方法はないか。
そこで、小規模多機能の話をしました。通いと訪問を組み合わせて自宅で暮らし、不安が強いときは泊まりも使う。
ご本人とご家族の間で、「それを試してからでも、施設に入る決断は遅くない」という話になりました。
同じ小規模多機能なのに、返事は違った
小規模多機能の事業所は、3か所に相談しました。この方の支援が、できるかどうか。
2か所は、難しいという返事でした。
訪問にあまり行けないので、薬の管理が心配なら、毎日デイサービスに来るか、ずっと泊まってほしい。
でも、ご本人は、自宅にいたいのです。
毎日デイサービスに通うことも、泊まりを利用することも、それがご本人の希望なら、問題ありません。でも、この方は、できるだけ今までの暮らしを変えずに、自宅で過ごしたいと願っていました。
その希望をかなえるために、小規模多機能を探しているのに、通いか泊まりに、生活を合わせなければならない。
自宅にいたいのに、それでは本末転倒だと、私は思いました。
残りの1か所は、「受け入れられますよ」と言ってくれました。
その人の暮らしに合わせて、支援を組み立ててくれた

引き受けてくれた事業所は、ご本人の生活を、大きく変えないように、支援を考えてくれました。
通いは、それまでと同じ週3回。ご本人のペースを崩さないようにしてもらいました。
通いのない日は、職員さんが自宅を訪問して、薬を確認します。通いの日は、送迎のスタッフが、薬を確認します。
こうすれば、毎日、誰かがご本人と顔を合わせます。
毎日かかわっていると、不安が強くなっている様子や、いつもと違う変化に、気づいてもらえます。そして、「そろそろ泊まりが必要かな」と、泊まりにつなげてくれます。
通い、訪問、泊まり。この3つを、ただ用意しているだけではなく、ご本人の暮らしに合わせて使ってくれる。そこが、違いでした。
それでも、ご本人は迷っていました
ただ、受け入れ先が決まっても、すぐに利用が始まったわけではありません。
小規模多機能に登録すると、それまで通っていたデイサービスも、担当のケアマネジャーも、変わります。ご本人は、そのことを、ためらっていました。
まずは、事業所の見学に行きました。戸惑いはありましたが、最終的には、ご本人が決めました。
施設に入るにしても、環境は変わります。それなら、自宅にいられるほうを選ぼう、と。
それから3年。
その方は、今も自宅で暮らしています。ご家族も、夜中の電話に追われる生活から離れて、穏やかな日常に戻りました。
時々、様子を聞くと、夕方に急に不安になったときは、泊まりに切り替えているそうです。月に数日、泊まっていると聞いています。
すべての方が、同じようにうまくいくとは限りません。でも、この方にとっては、施設に入るか、自宅で我慢して暮らすか、その二択ではありませんでした。
近所のおばあちゃんを支えていた事業所

もうひとつ、私が実際に関わった話があります。
5年以上前、私の家の近くに、認知症のある、一人暮らしのおばあちゃんが住んでいました。そのおばあちゃんも、小規模多機能を利用していました。
おばあちゃんは、大切なものを持って、外に出かけてしまうことがありました。
ご家族の了解を得て、近所の数人が、見守りの支援者になっていました。私も、その一人でした。
外にいるおばあちゃんを見かけたら、小規模多機能に電話をかける。そう決まっていました。私も、2回ほど、出かけているおばあちゃんに声をかけて、事業所に連絡しました。
同じ介護の仕事をしていることもあり、事業所から、「家の電気がついているか、見てほしい」と頼まれて、報告したこともあります。
危険なときには、警察とも連携していました。
その事業所は、おばあちゃんが、どんなときに外に出てしまうのかを、把握していました。雨が降ると、外に出がちになる。そう聞いていました。
だから、雨が降り始めると、事業所が迎えに来ていました。実際に、迎えに来たところも、私は見ています。

泊まりの枠が空いていれば、そのまま泊まり。空いていないときは、通いの利用に切り替えて、対応していました。
年に1度、そして、おばあちゃんの生活の様子が変わったときには、話し合いが開かれました。その場には、近所の人も、私も、呼ばれていました。
もちろん、ご家族の了承を得て、個人情報には、十分に配慮したうえでのことです。
事業所だけでなく、ご家族も、近所の人も、同じおばあちゃんを見守っていました。
同じ制度でも、事業所によって違う

小規模多機能は、どの事業所にも、通い・訪問・泊まりの機能があります。でも、その3つをどう使うかは、事業所によって違います。
3か所目の事業所は、薬の確認をきっかけに、毎日ご本人と顔を合わせ、不安が強くなったときには、泊まりにつなげてくれました。
近所のおばあちゃんの事業所は、雨が降ると外に出やすくなることを知っていて、雨が降り始めると、迎えに来ていました。
どちらも、決まったサービスを提供するだけではなく、その人の生活を見て、必要なときに、支援の形を変えていました。
一方で、訪問での対応が難しく、通いや泊まりを提案した事業所もありました。
ご本人が望む暮らしを続けるために、どこまで対応してもらえるのか。その違いは、契約前に知っておきたいところです。
パンフレットには、どの事業所も、「通い・訪問・泊まり」と書いてあります。でも、その3つを、どんなときに、どのように使ってくれるのかは、パンフレットだけではわかりません。
だから私は、サービスの名前だけでなく、具体的な生活の困りごとを伝えて、どんな支援ができるのかを聞いてほしいと思っています。
契約前に確認したいことは、前の記事にまとめています。
小規模多機能は、名前で選ばない。
その人の暮らしに合わせて、動いてくれる事業所かどうかで、選ぶ。



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