介護施設の見学で何を見る?ケアマネと家族が「ここなら預けたい」と思った理由

介護施設のこと

ここ数か月、担当している利用者さんのご家族と、地域のショートステイや特別養護老人ホーム(特養)を見学して回っています。

一緒に見学しているご家族は、介護の現場を知っている方です。

ご自身が働いていた施設に預けると、お互いに気を遣います。何かあったときに言いにくくなるし、指摘もしにくくなる。だから、ほかの施設を見ています。私も、そう思いました。

私も介護する家族として、ショートステイに預けるときも、施設への入所を考えるときも、後ろめたい気持ちが出てきます。

できれば、笑っていてほしい。安心して預けられる場所がいい。

「忘れちゃっても、その一瞬が幸せなら」

見学を重ねるなかで、ご家族が、こんな話をしてくれました。

「書類が立派でも、建物が立派でも、そんなことはどっちでもいい。残された時間を、少しでも笑っていてほしい。認知症で忘れちゃっても、その一瞬の時間、幸せだなって思ってほしい」

その方は、そういう思いで、介護の仕事をしてきたと話していました。

私は、その言葉がとても心に残りました。

私たちが見学で探していたのは、立派な建物でも、立派なパンフレットでもありませんでした。そんな時間を大切にしてくれる場所だったのだと思います。

見学で、実際に見ていたこと

見学というと、建物の新しさや、きれいさを見るものだと思うかもしれません。

私たちが見ていたのは、そこではありませんでした。

私たちが見学で見ていたこと

  • 匂いに配慮しているか
  • 消火器や消火栓のまわりに、物が置かれていないか
  • 床に、埃がないか
  • ショートステイの活動内容
  • 職員さんの動き
  • 案内してくれた相談員さんの、こだわり

匂い

ある施設は、すごく強い匂いがしました。

ちょうど、見学が食事の前の時間でした。ご家族と私は、「この匂いの中で食事をするのは、きつい」と話しました。

見学した日がたまたまだったのか、いつもそうなのかは、分かりません。

もし、いつもこの匂いなら、毎日そこで食事をする利用者さんにとっては、気になる環境だと思いました。

私は、匂いにどれだけ配慮しているかを、見るようにしています。

消火器のまわりと、床

消火器や消火栓のまわりに、物が置かれていないか。

前に荷物や段ボールがあると、火事のときに、すぐに使えません。避難の通り道に物があれば、逃げにくくなります。

床に、埃がたまっていないか。これも、基本的なことのひとつだと思います。

こういう基本的なところへの気配りは、その施設の日頃の姿勢を考える手がかりになる。私は、そう考えています。

もちろん、一度の見学で分かることは限られています。それでも、人が毎日暮らす場所です。見学のときに、案内されなくても目に入る、気になるところでした。

案内してくれた相談員さんに、こだわりを聞く

見学で多かったのは、設備の説明でした。お風呂、お部屋、トイレ。

ショートステイでは、日中どんな活動があるのかも、聞きました。

私は、案内してくれる相談員さんに、こだわっているところを聞くといいと思います。

利用者さんのために、何かに取り組んでいる。常に考えて、実行してくれている。そういう施設は、利用者さんが過ごしやすいし、「幸せだな」と思う時間が、多くなると思うからです。

熱意をもって説明してくれる相談員さんがいました。たとえば、こんなことです。

相談員さんが話してくれた、こだわり

  • 毎日お風呂に入りたいと言われれば、できるだけ希望に応えている
  • 機械浴だと肩までつかれないので、肩まで浸かれるように工夫している
  • 誕生日は誰にでも年に1回あるので、その日はその人を主役にして、お願い事をひとつ、職員で叶えている

なかでも、誕生日の話が、印象に残っています。

相談員さんは、利用者さんの誕生日に叶えたお願い事を、いくつか話してくれました。

  • 大好きだった旦那さんのお墓参りに行きたいと言われたので、連れて行った
  • よく行っていた喫茶店に、コーヒーを飲みに行った
  • 回転寿司を食べてみたいと言われたので、連れて行った

話してくれる相談員さんは、キラキラした表情でした。自慢しているようでした。話を聞いていると、職員さんたちも、利用者さんと一緒に楽しんでいる様子が伝わってきました。

「こういう自慢は、いくらでも聞きたいね」と、ご家族と話しました。

自信をもって自慢できる施設づくりをしているところが、いいのではないかと思います。

もちろん、相談員さんの説明だけで、施設のすべてが分かるわけではありません。だからこそ、実際に働いている職員さんの動きや、利用者さんへの声かけも、あわせて見ていました。

職員さんの動きと、利用者さん

もうひとつ、気になったのが、職員さんの動きです。

ある施設では、職員さん同士が立ったまま、おしゃべりをしていました。フロアには、テレビをずっと見ている利用者さんがいて、寂しそうに見えました。

案内してくれた相談員さんは、その光景を、特に気にしていないように、私には見えました。

これは、私が見学した日に見た範囲のことです。いつもそうなのかは、分かりません。

別の施設は、違いました。

スタッフさんの動きが、こまやかでした。少し手が空くと、利用者さんに話しかけていました。

同じ「職員さん」でも、利用者さんへの向き合い方は、施設によって違って見えました。

新しくなくても、「預けるならここ」

その施設は、あまり新しくはありませんでした。

でも、ご家族と私は、「預けるなら、こういう施設がいいね」と話しました。

建物が新しいかどうかよりも、そこで働く人が、利用者さんにどう接しているか。私たちが見ていたのは、そこだったのだと思います。

これから見学に行く方へ

一度の見学で、施設のすべては分かりません。私たちも、見学した日に見た範囲のことしか、分かりませんでした。

施設を選ぶときに大事にしたいことは、ご家族によって違います。医療面の対応や費用、家からの距離など、考えることもたくさんあります。私たちが見ていたことは、その中のひとつです。

気になったことや、施設のこだわりは、その場で、案内してくれた方に聞いてみてください。たとえば、こんな聞き方があります。

「この施設が、利用者さんのために大切にしていることは何ですか?」

設備の説明だけでは分からない、その施設の考え方が見えてくるかもしれません。

そして、ご家族と「ここなら預けたい」と思えるかどうかを、話しながら回ってみてください。

建物が新しいかどうかより、そこで働く人が、利用者さんにどう接しているか。

認知症で忘れてしまっても、その一瞬は幸せであってほしいです。

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