ショートステイを嫌がったら、別の方法も考える|ケアマネが説得せずに選んだ支援

介護の豆知識

「ケアマネさんから、説得してもらえませんか」

ショートステイの利用を嫌がるご本人を前に、ご家族からそうお願いされることがあります。

ご家族も困っているからこそ、ケアマネに頼むのだと思います。

私はケアマネジャーを20年ほどしていますが、担当してきた方では、初めてのショートステイを嫌がる方が9割ほどいる印象です。特に男性は、抵抗を示す方が多いように感じています。

もちろん、これは統計ではなく、私自身の経験から感じていることです。

そんなとき、私はどうするのか。その場には立ち会います。でも、説得はしません。

なぜ、ケアマネの私は説得しないのか

ご家族が「説得してほしい」と言うときの気持ちは、大きく2つあるように感じます。

ひとつは、第三者のケアマネが話したほうが、ご本人も納得してくれるのではないか、という期待です。もうひとつは、言いにくいことは言いたくない、悪者になりたくない、という気持ちです。

でも、私は少し違う考えです。

ショートステイの内容を、私が説明することはよくあります。「行ってみませんか?」と声をかけることもあります。

でも、嫌がっているご本人を、説得して利用してもらうことはしません。他人の私から利用してほしい理由を説明しても説得力がなく、ご本人はかえって嫌だと感じてしまうと思うからです。

私は、ショートステイを利用する理由は、できるだけご家族から説明していただくほうがよいと考えています。ご本人も、ご家族の言葉のほうが、納得しやすいと思うからです。

私の役割は、ご本人を説得することではありません。

ご本人とご家族、それぞれの言い分を整理することです。

ご家族には、ショートステイを利用してほしい事情があります。

仕事が忙しい、介護から少し離れて休みたい、家を空けなければならない。

一方、ご本人にも、行きたくない理由があります。知らない場所に泊まりたくない。自分の家で過ごしたい。いつもの生活を変えたくない。

どちらか一方が間違っているわけではありません。

私は、その両方の話を聞いたうえで、ご本人に尋ねます。「じゃあ、何だったらいいですか?」。そして、その希望に応えられる方法がないか、一緒に考えます。

  • ご本人とご家族、それぞれの言い分を整理する
  • ご本人に「何だったらいいですか」と聞く
  • その要望に応えられるか、一緒に話す

「行くなら捨ててくれ」利用当日の朝にかかってきた電話

ある方のショートステイの利用が決まっていた日のことです。朝、ご家族から電話がかかってきました。

「どうしても行かないと言っているんです」

そして、こう続けました。

「行くなら捨ててくれって言うんです。なんだか、かわいそうになってきました」

ご家族も、ショートステイが必要だから利用を決めたはずです。それでも、そこまで嫌がる姿を見ていると、迷ってしまったのだと思います。

結局、その日からのショートステイは中止にしました。

正直、困ったな、と思いました。働く側の気持ちが、よく分かるからです。でも、未知の生活に入るご高齢の方の気持ちも、分からなくはありません。

こういうことは、本当にライブで、どうなるか分かりません。折衷案が見つかるといいなと思いながら、ご本人のところへ話をしに行きました。

すると、ご本人は私にもはっきり言いました。

「ケアマネさんも嫌いだ」

「家族の頼みばかり聞いて、私の気持ちは分かってもらえない」

ご本人からすれば、ご家族もケアマネも、自分をショートステイに行かせようとする人たちに見えていたのでしょう。

ここで無理に利用を進めれば、これまで築いてきた関係まで壊れてしまうかもしれません。それでは意味がありません。私は、ご本人、ご家族と一緒に、別の方法を考えることにしました。

ショートステイをやめて、デイサービスの時間を延ばした

そのご家庭がショートステイを必要としていたのは、繁忙期でした。ご家族が忙しく、自宅を留守にする時間が長くなるため、その間をどう過ごしていただくかが課題でした。

そして、ご本人には、どうしても譲れないことがありました。自宅で野球中継を見たかったのです。

そこで私は、ショートステイ以外の方法を探しました。毎日利用できて、時間の延長にも対応してくれるデイサービスです。

通常は17時に帰宅するところを、繁忙期の間だけ19時まで利用することにしました。デイサービスで夕食を済ませ、寝間着に着替えてから帰宅します。家に戻ったら、あとは休めるようにしました。

ご家族が不在の時間はデイサービスで過ごし、夜は自分の家に帰る。そんなプランに変更しました。ご本人も、この方法なら受け入れてくれました。

ご家族は、大変だけれど、一人にはできないので助かる、と話していました。

どこのデイサービスでも、夕食や時間の延長に対応しているわけではありません。利用できるサービスや送迎の時間は、事業所によって異なります。

気になる方は、担当のケアマネジャーに相談してみてください。

でも、この方の場合は、ショートステイにこだわらなかったことで、別の選択肢が見つかりました。

ショートステイに行ってもらうことが目的ではなく、ご本人とご家族が生活を続けられる方法を探すことが目的だったのです。

「絶対に嫌だ」と言っていた人が、見学で一番質問していた

もちろん、ショートステイを嫌がっていた方が、実際に利用するようになったこともあります。ご本人との関係ができている場合には、私も一緒に施設の見学に行くことがあります。

ある方は、ショートステイの話をすると、ずっと嫌だと言っていました。ところが、いざ見学に行くと、誰よりも質問していたのはご本人でした。

「何時まで起きていてもいいの?」

「テレビを大きな音で見てもいいの?」

「部屋に閉じこもっていてもいいの?」

次から次へと質問が出てきました。あれほど嫌だと言っていたのに、もう泊まったときの生活を考えているのです。

もしかすると、ショートステイそのものが嫌というより、そこでどんな生活をするのかが分からないことが、不安だったのかもしれません。

見学まで進んだ方は、気持ちがある程度、固まっているように感じます。お年寄りは、心の中では分かっているように思います。「いずれは」と。

もちろん、見学したからといって、必ず利用できるわけではありません。それでも、実際に施設を見て、自分の生活を想像することには、意味があると思っています。

では、私の母はどうだったのか

ここまで、担当してきた方の話を書きました。では、認知症の母、オハナさんはどうだったのか。

実は、母はショートステイを嫌がったことがありません。

初めて利用したのは、私が入院するときでした。私が入院する間、母にはショートステイで過ごしてもらう必要がありました。

母は、娘である私の体調を心配していました。自分がショートステイに行くことで、娘が安心して治療を受けられる。母なりに、親としてできることをしてくれたのだと思っています。

最初から長く泊まってもらったわけではありません。練習も含めて、3回利用しました。実際に泊まってみて、嫌ではないと分かったので、次からも嫌がらずに行ってくれています。

ショートステイを使わないという選択もある

ショートステイを嫌がるご本人を前に、ご家族が困ってしまうのは当然だと思います。仕事もある。介護もある。ご家族自身の生活もあります。

だから、ショートステイを利用したいと思うことは、決して悪いことではありません。

一方で、ご本人にも、どうしても譲れないものがあるかもしれません。それが、自宅で見る野球中継だったり、好きな時間にテレビを見ることだったりします。周りから見れば小さなことでも、ご本人にとっては大切な日常です。

ご家族の負担が大きく、どうしても支援が必要な場合もあります。本人が嫌がるからといって、ご家族だけが無理を続ければよいわけではありません。

だからこそ、両方の話を聞きます。ショートステイを利用する方法を探すこともあれば、別のサービスを考えることもあります。

ショートステイを使ってもらうことが、私の仕事ではありません。

その間に立って、どんな暮らし方なら続けていけるのかを一緒に考える。それが、私の考えるケアマネジャーの仕事です。

泊まりが必要なときは、小規模多機能という方法も

ショートステイを嫌がる場合、小規模多機能型居宅介護というサービスに切り替える方法もあります。

小規模多機能型居宅介護は、ひとつの事業所で「通い」「訪問」「泊まり」を組み合わせて利用できるサービスです。

小規模多機能型居宅介護の通いサービスで慣れた場所で、顔なじみの職員さんに対応してもらいながら泊まれるため、環境の変化が苦手な認知症の方にも、選択肢のひとつになります。

ただし、利用を始めると、現在のデイサービスは原則として継続できず、担当ケアマネジャーも小規模多機能型居宅介護事業所のケアマネジャーに変わります。

介護保険の基本料金は要介護度などに応じた月額制ですが、食費や宿泊費などは別途必要です。また、泊まりは希望した日に必ず利用できるとは限りません。

ショートステイが難しいとき、こうしたサービスがあることも知っておいてほしいと思います。

小規模多機能型居宅介護のメリットや注意点については、ケアマネとしての経験も交えながら、別の記事で詳しくお伝えします。

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